まず、昭和三十九年より四十六年までの『事務概況』をみると、①森林組合、森林愛護組合などの林業団体の育成指導、②山火警防対策、③猟政関係(害鳥獣の駆除)、④民有林の育成(造林事業に対する市費補助)、⑤治山対策(小規模治山事業)などの林業振興策が実施されていることがわかる。
これらの事業はその後も継続して実施されたと思われるが、四十七年以降の『事務概況』や『市政概要』には、林業振興策についての具体的な記述はなくなり、代わって、「現在における人口の都市への集中化と産業の発展は、都市近郊の森林が単なる木材生産の場としての役割だけでなく、水源確保、災害防備、景観保全、レクリエーションの場としての役割をもつ必要性をますます強くしている」といった記述がずっと続くようになる。
森林・林業が木材生産の機能だけでなく、公益的機能を持つことは従来から言われてきたことではあるが、本市が大都市としての発展を遂げるのに伴って、公益的機能の重要性がますます強調されるようになったわけである。年号が昭和から平成に改まるとともに、こういった傾向は決定的なものとなり、元年以降の『市政概要』には、森林・林業は公園・緑地の部分で取り上げられるようになる。いまや本市の林業は、産業としての役割よりも、景観保全やレクリエーションの場としての役割を果たすことにシフトすることにより、新しい林業・森林のあり方を模索している。
第一に、一般民有林(私有林)を保全すべく、五年以降に都市環境緑地事業が実施されているが、本事業は緑の基本計画による保全対象地、市街地近接地で開発志向の強い地域、自然環境・景観及び防災上の機能の点で保全が必要な地域について、相続・転売等により保全が支障をきたす場合には計画的に公有化を図るものである。
第二に、一般民有林(私有林)の保全を図るための、ないし新しく活用するための経費を恒常的に捻出するための財源措置として、本市では六十三年に森林保全基金を創設したが、平成十五年度末現在で一〇億二九九万円に達した。この基金は主として市民の森事業のために運用され、所有者に奨励金を払う借用方式により散策路や各種施設の整備を行い、市民に開放している。元年に盤渓市民の森(中央区、八八ヘクタール)、三年に白川市民の森(南区、一三四ヘクタール)、五年に南沢市民の森(南区、二三ヘクタール)、六年に豊滝市民の森(南区、六四ヘクタール)、九年に西野市民の森(西区、六一ヘクタール)、十三年に手稲本町の森(手稲区、三八ヘクタール)を指定した。
第三に、本市の市有林(清田区白旗山など七カ所)は、施業林経営を継続しつつモデル都市林としての森林育成を図っているが、同時に森林レクリエーションの場として施設整備を進め市民に開放している。この事業は都市環境整備事業と称されているが、現在までのところ札幌ふれあいの森(白旗山都市環境林内、一二〇ヘクタール)、自然観察の森(同前、八五ヘクタール)、有明の滝自然探勝の森(有明の滝都市環境林内、八三ヘクタール)がオープンしている(環境局緑化推進部事業概要 各年)。
写真-1 白旗山都市環境林