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北方領土返還要求運動

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 昭和三十一年(一九五六)の日ソ共同宣言で継続交渉となっていた択捉・国後・色丹島及び歯舞諸島のいわゆる北方領土返還問題は、三十五年の日米安保条約改定を機にソ連が「領土問題は解決ずみ」とする姿勢に転じたのに対し、三十七年三月、わが国の国会が初めて「北方領土」の呼称を使い「回復に関する決議」を衆参両院で採択した(昭40から返還に関する決議、昭54から解決促進に関する決議)。四十八年十月、日ソ首脳会談で「領土問題を未解決の問題とする平和条約交渉の継続」を確認する共同声明が発表されたが、この間も北海道では、三十一年に設置された道の領土復帰北方漁業対策本部(昭59から北方領土対策本部)や、札幌に本部を置く関連諸団体(表4)などにより官民一体の返還要求活動が行われてきた。なかでも北方同盟は、四十年八月を北方領土返還運動月間と定めて以降、毎年全国主要都市で「北方領土展」を開催し、四十五年から「北方領土返還要求北海道民大会」(昭51から東北・北海道国民大会、または北海道東北国民大会)や雪まつり会場での署名運動、全国主要都市へのキャラバン隊派遣活動を行うなど、返還要求運動の中心となった(北方領土返還運動50年史)。四十三年、青年・女性・労働など広範な団体で構成する北連協(北方領土問題連絡協議会、昭52から同返還運動連絡協議会)が結成され、同年十月に東京で初の全国大会を開催したほか、各団体の独自活動や請願署名運動を展開した。また北対協などとともに、全国都府県議会に対し領土返還に関する決議や要望意見書の議決、民間団体と地方公共団体一体の「県民会議」の設立を働きかけ、五十一年、東京都議会決議をもって全国四七都道府県議会すべてで決議が完了した。県民会議は、四十五年に宮城県に設立されて以降、六十二年三月の島根県における「竹島・北方領土返還要求運動県民会議」結成により全都道府県での設置が完了した(北方領土対策本部資料)。
表-4 札幌市所在の北方領土返還要求運動主要団体一覧
団体名所在地設立期日主要目的摘  要
社団法人北方領土復帰期成同盟
(北方同盟)
札幌市昭和25年11月、千島及び歯舞諸島返還懇請同盟として結成。同38年北方領土復帰期成同盟に改組。同40年4月28日、社団法人認可国民世論・国際世論を啓発し、平和的に北方領土の返還を促進する事業を行う。14支庁管内及び札幌市に地方支部があり、事務局長各1人・北方領土返還推進員各1人(札幌は3人)・返還協力員計440人を配置。
社団法人千島歯舞諸島居住者連盟
(千島連盟)
札幌市昭和30年5月、千島列島居住者同盟として結成。同33年7月23日、改組し社団法人認可返還運動の促進と元居住者の福祉の増進を図る。道内外に15支部があり会員数4548人(平成14年現在)。
特殊法人北方領土問題対策協会札幌事務所
(北対協)
札幌市昭和36年12月、特殊法人北方協会として札幌に設立。同44年5月22日、北対協の設立(東京)により改組北方領土問題解決促進と旧漁業者等への事業や資金援助。北方領土問題対策協会法」に基づき設立された特殊法人。
北方四島交流北海道推進委員会
(道推進委)
札幌市平成4年2月13日交流による相互理解と問題解決のための雰囲気づくりの推進。事務局は北海道北方領土対策本部内にある。
北方領土問題対策協会『北方領土返還運動50年史』及び各団体資料(平14)より作成。

 五十六年一月、政府は一八五五年二月七日(安政元年十二月二十一日)の「日露通好条約」締結日を「北方領土の日」にすることを閣議決定し、政府及び関連団体共催による設定記念集会を開催した(昭57から北方領土返還要求全国大会)。実行委員会方式となっていた札幌雪まつり会場での署名活動や各種行事による啓発活動も活発化し、五十七年から根室半島で「北方領土ノサップ岬マラソン大会」も始まった。道同盟も、各種大会やキャラバン隊派遣に積極的に参加する一方、根室市で独自の全国集会を継続したが、運動は平成元年(一九八九)、民間労組「連合北海道」に、翌二年には新「連合北海道」に継承された。三年、ゴルバチョフ大統領がソ連の元首として初めて来日し、翌年から「ビザなし交流」が開始された。同三年十月、北海道市長会(会長・桂信雄札幌市長)も「北方領土の復帰促進」決議を行ったが、返還についての具体的進展はその後もなく、七年には全国の復帰要求・請願署名数が六二九〇万人に達する一方で(北方領土返還運動50年史)、北海道東北国民大会の参加者数も次第に減少した。政府が日ロ平和条約締結の目標とした十二年の国民大会は八月に札幌市民会館で開催され、参加者一二〇〇人と「従来にない大規模集会」となったが、最後に「今世紀中に四島一括返還が実現するよう、外交交渉を強力に進める」決議を行うにとどまった(道新 平12・8・24)。

写真-2 雪まつり会場での署名活動