総理府調査とは別に、経済企画庁の「国民生活選好度調査」による生活階層意識の推移を表29に示したが、同調査の「
中流」意識も八〇パーセント前後の高率で推移・定着し、平成十一年(一九九九)には、わずかに上流が低下して下流が上昇した程度となった。しかし、この
中流意識も他人と比べた人並み感覚の反映に過ぎず、実際の生活全般への「満足度」は昭和五十九年をピークに低下し、平成十一年には四二・二パーセントで過去最低となった(図3)。また、「暮らしはよい方向に向かっている」と考える人も平成二年をピークに急低下して過去最低となり(図4)、特に三、四〇代で男女とも二〇パーセントを割り、全世代で悲観的な女性の四〇代では一一パーセントに低下している。「老後の見通し」についても、明るいと考える人は昭和六十二年以降、図5のように低下し、二、三〇代の女性では七パーセント前後にまで減少した。また、平成九年度「
道民生活白書」の生活価値観調査(複数回答)では、六一・一パーセントが「物質的にはある程度豊かになった」と回答し、一方で「生活水準を維持した上での心の豊かさを願」う「道民像が浮き彫りになった」という(道新 平10・4・10)。
種別 年次 | 総数 | 上流 | 中流 | 下流 | わからない ・不明 |
昭53 | 100 | 5.7 | 81.0 | 9.0 | 4.4 |
56 | 100 | 5.0 | 79.2 | 11.1 | 4.7 |
59 | 100 | 5.4 | 81.8 | 10.5 | 2.4 |
62 | 100 | 4.8 | 79.8 | 15.6 | 0.2 |
平 2 | 100 | 5.2 | 78.8 | 15.7 | 0.3 |
5 | 100 | 4.6 | 80.7 | 14.3 | 0.4 |
8 | 100 | 5.6 | 78.7 | 15.3 | 0.4 |
11 | 100 | 4.0 | 78.9 | 16.6 | 0.5 |
経済企画庁『平成11年度国民生活選好度調査』による。「上流」は<上の上>+<上の下>、「中流」は<中の上>+<中の下>、「下流」は<下の上>+<下の下>。6段階ごとに四捨五入しているため、総数100%と内訳とが合わない。 |
図-3 低下傾向にある生活全般の満足度(全国) |
設問: | 「あなたは生活全般に満足していますか。それとも不満ですか」。 |
回答: | ①満足している。②まあ満足している。③どちらともいえない。 ④どちらかといえば不満。⑤不満。⑥わからない・無回答 |
区分 | ① | ② | ③ | ④ | ⑤ | ⑥ |
年 | % | % | % | % | % | % |
昭53 | 10.9 | 45.8 | 26.4 | 10.6 | 5.0 | 1.3 |
56 | 10.5 | 45.2 | 26.8 | 10.9 | 5.2 | 1.4 |
59 | 13.7 | 50.5 | 20.4 | 11.6 | 3.5 | 0.3 |
62 | 10.1 | 39.9 | 30.0 | 14.7 | 5.3 | 0.1 |
平 2 | 9.2 | 44.3 | 25.8 | 15.0 | 5.4 | 0.3 |
5 | 7.0 | 44.9 | 27.5 | 15.8 | 4.6 | 0.1 |
8 | 7.7 | 39.8 | 29.7 | 16.0 | 6.5 | 0.4 |
11 | 5.9 | 36.3 | 31.6 | 16.7 | 7.4 | 0.1 |
経済企画庁国民生活局『平成11年度国民生活選好度調査-国民の意識とニーズ』より。 |
図-4 低下する「暮らしよい方向に向かっている」の回答(全国) |
設問: | 「世の中は次第に暮らしよい方向に向かっている」。 |
回答: | ①全くそうである。②どちらかといえばそうである。 ③どちらかといえばそうでない。④全くそうではない。⑤無回答 |
区分 | ① | ② | ③ | ④ | ⑤ |
年 | % | % | % | % | % |
昭53 | 4.5 | 32.8 | 39.4 | 13.6 | 9.7 |
56 | 2.5 | 23.9 | 45.8 | 18.6 | 9.2 |
59 | 4.1 | 33.6 | 43.7 | 13.4 | 5.2 |
62 | 2.6 | 31.8 | 51.9 | 13.4 | 0.3 |
平 2 | 3.1 | 43.1 | 43.3 | 10.1 | 0.4 |
5 | 2.3 | 35.6 | 49.5 | 12.1 | 0.6 |
8 | 1.8 | 30.1 | 53.4 | 14.2 | 0.4 |
11 | 1.3 | 19.3 | 56.0 | 23.3 | 0.2 |
経済企画庁国民生活局『平成11年度国民生活選好度調査-国民の意識とニーズ』より。 |
図-5 低下している老後の明るい見通し(全国) |
設問: | 「自分の老後に明るい見通しを持っている」。 |
回答: | ①全く明るい見通しである。②どちらかといえば明るい見通しである。③どちらかといえば明るい見通しではない。④全く明るい見通しではない。⑤無回答 |
区分 | ① | ② | ③ | ④ | ⑤ |
年 | % | % | % | % | % |
昭53 | 5.8 | 29.4 | 29.9 | 13.9 | 21.1 |
56 | 4.0 | 24.1 | 37.8 | 16.0 | 18.1 |
59 | 7.0 | 28.8 | 37.5 | 15.3 | 11.4 |
62 | 2.9 | 27.2 | 49.9 | 19.4 | 0.6 |
平 2 | 3.1 | 26.1 | 49.1 | 21.3 | 0.4 |
5 | 2.5 | 24.4 | 49.9 | 22.7 | 0.4 |
8 | 2.3 | 22.0 | 49.5 | 25.8 | 0.5 |
11 | 1.8 | 15.6 | 49.3 | 33.1 | 0.2 |
経済企画庁国民生活局『平成11年度国民生活選好度調査-国民の意識とニーズ』より。 |
平成十二年の電機連合(旧電機労連)による組合員生活実態調査と
家計調査では、「マイホーム」にあこがれながら「ウチの会社」で「モーレツ」に働き、「その対価を耐久消費財や住宅ローンに化身させるというサイクル」(加藤哲郎 前出書)が崩れ、「ゆとり世帯」が減少して「トントン世帯」や「やりくり世帯」が大半となった。特に四〇歳以上の家計は厳しく、負担感の最も強い費目(複数選択)に「家賃・住宅ローン返済」を六五・九パーセントがあげ、以下、自動車維持費、生保や損保の掛金、税・社会保険料などが続く。年齢別では三、四〇代で家賃・住宅ローンが七割前後、四〇代後半では子どもの
教育費が五〇・五パーセントと負担感が重く、ローン返済の月平均額は一〇・五万円(中央値)で世帯総収入の二五パーセントを上回る世帯が三分の一を占める。子どもの
教育費も三〇代後半で年間三九万円、四〇代五〇万円、五〇歳以上八〇万円と増加し、大学生がいる家庭の負担はさらに高額で重い。雇用不安も重なり、失業への不安を感じている人は六五・一パーセントにのぼり、四〇歳代後半では八割にも達する結果となった(電機連合 二〇〇〇年生活実態調査の概要)。賃金や雇用不安は中小零細企業で著しく、連合北海道への電話労働相談件数も、十年の一六五〇件から十二年には二二八〇件に増加した。なかでも札幌市を含む石狩管内が全体の三分の二を占め、「賃金切り下げに従わないと派遣社員に代えると迫られた」など賃金、雇用関係の相談が多くなった(道新 平13・3・2)。