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札幌市の「女性計画」

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 札幌市は、昭和五十九年(一九八四)と平成六年(一九九四)の二回女性計画を策定し、これを指針とする施策を推進した。第一次の『札幌市女性のための計画―女性の自立と地位向上のための指針―』は、前記二回の調査と五十六年に設置された札幌市婦人問題懇話会(座長関清秀、副座長山本順子ら二一人)の提言をうけ、「新札幌市長期総合計画」と整合して策定された。
 第一次女性計画の理念と趣旨は「世界行動計画」と「国内行動計画」」に沿うものとされた。「女性が社会的に不利な立場にある実情を直視して、男性と同等の地位に引き上げるための具体的な施策を講じる」「女性の地位向上は、札幌市が住みよいまちとして発展を続けていくための基本的な要件」「男女の固定的役割分担意識を取り払う」などの視点で主要課題とされた項目を次に掲げる。
 1.男女平等の教育と啓発活動の推進
 2.女性の健康増進と母性の保護
 3.家庭生活の安定向上と働く女性の社会的環境の整備
 4.女性の福祉の向上
 5.女性の社会参加の促進
 6.国際交流の促進と女性の平和への寄与
 7.婦人文化センターの拡充
 この計画に沿って以後一〇年間に実施された主な新規事業を次にあげてみる。
 1の「学校における男女平等教育の推進」については、『男女平等教育指導資料』(昭61)の作成と幼・小・中・高への配布、中学校用副読本『むすぶ心ひろがる未来』(昭62)の発行。「男女平等意識の啓発」については、グラフ誌『さっぽろの女性』(昭60~平10)の発行、「サッポロ・フォーラム(のち「女と男のトークセッション」と改称)」「女と男のための講演会」(昭59~)の開催。
 3の「働く女性の社会的環境の整備」については、産休あけ保育・延長保育などの実施、『女子パートタイマー雇用実態・就労意識調査』(平2)『パートタイマーハンドブック』(平3)『育児休業法Q&A』(平4)の発行。
 4の「女性の福祉の向上」については母子福祉センターの設置(平1)。
 5の「政策決定過程への参加と登用」については、「札幌市審議会等委員への女性登用促進要綱」(平1)の制定などである(「札幌市女性のための計画」事業概要及び推進結果)。なお計画を総合的効果的に推進するため、助役が委員長として庁内の連携を図る「札幌市女性のための行政推進会議」(昭59)が設置された(女性関係施策の概要)。
 平成六年三月、札幌市は『男女の共同参画型社会を目指すさっぽろ計画 第2次女性計画』を策定した。「新国内行動計画」や男女雇用機会均等法・育児休業法の制定、高齢化社会の到来などの社会的・経済的変化に対応した新たな計画が必要として、札幌市女性計画提言委員会の提言や市民のヒアリングを元に、「第三次札幌市長期総合計画」との整合性を図りながら次の基本目標を掲げ、具体的施策二五七項目については担当部課も示した。
 Ⅰ あらゆる分野への男女共同参画の促進
 Ⅱ 男女平等観に立つ教育と啓発の推進
 Ⅲ 女性が働くための条件整備
 Ⅳ 高齢化社会への対応と女性の福祉の充実
 Ⅴ 健康の保持・増進と母性保護の推進
 同委員会は第一次計画について、「職員採用試験の性区分の一部廃止、女性啓発誌の発行など一〇〇を超える施策が実施され、着実に成果を上げてきている」と評価しつつ、『女性問題に関する市民意識調査』(平3)を分析して市の女性職員登用促進、パートタイム労働者の権利保障なども含む新たな提言を行った。なお女性政策に対する市民の要望は、まず保育と介護への援助であった。
 新規事業を中心に計画の進捗状況をみると、『札幌市女性有識者名簿』の作成、性や育児に関する団体活動の支援、男女共同参画サポーターの養成(平10~13)のほか、男性向け啓発誌『男たちへのメッセージ』(平6~8)、小学校用男女平等教育副読本『心のハーモニー』(平8)、男女共同参画ガイド『共に輝き個性を描こう』や『札幌市男女共同参画白書』(平10)『女性のためのワークガイド』『男女共同参画に関する企業の意識調査報告書』『セクシュアル・ハラスメントの防止に向けて』情報誌『じぇんだーふりーさっぽろ』(平11~15)の発行などがある(札幌市の男女共同参画施策の推進状況)。
 なおこの間組織や施設の呼称に変化が見られた。「狭い固定的なイメージ」をもたせる「婦人」から、男性の対語としての「女性」に変更する動きが進んだ。札幌市の行政組織等が「婦人」から「女性」に変わるのは平成四年、「男女共同参画」に変わるのは十二年である。