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物価の安定・消費税導入・「平成米騒動」

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 札幌市の消費者物価指数は、昭和六十年(一九八五)以降、平成十二年まで低い水準ながら上昇し続けた(図4)。初めて物価が対前年比で下がったのは昭和六十二年で、続く六十三年は六十年と同じ物価のレベルに戻った。しかし、平成元年には再び上昇した。原因は、四月一日に消費税(三パーセント)が導入されたことや、円安による原油高騰が影響して輸入原材料価格が上昇し、卸売物価を引き上げたこと、さらに順調な国内経済の拡大のなかで人手不足が進み、サービス価格や物流経費が増大してコストアップにつながったことである。札幌市は、消費税導入にあたっては、札幌市生活安定条例に基づいて、全国共通の食料品目(食パン・インスタントコーヒーなど)のほか、ジンギスカン料理の羊肉など地域性を生かして独自に設定した二七品目(キュウリ・ホウレン草など野菜・果物、鶏肉、羊肉)、合計六七品目を対象に調査し、石油製品や家事用品、衣料品とともに監視にあたった(札幌市消費者行政事業概要 平2)。また、平成元年は消費税導入と引き替えに、三月三十一日に車やゴルフ用品、家庭電化製品、CD(コンパクトディスク)などに課せられていた物品税が廃止され、高級酒ウイスキーなどの酒税改定により値下げも実施された。物価の上昇はバブル期と好景気の四年まで継続し、六年以降は価格破壊によるデフレ傾向が続いてマイナスとなり、十二年(二〇〇〇)は不況によりさらにデフレが強まり、大きく下がった。

図-4 札幌市の消費者物価指数の推移(平成12年=100)
『札幌市統計書』より作成。

 この間に、平成五年に一〇〇年に一度といわれるほどの不作となった米生産は、国内米だけでは需要を満たさないためにタイ米などの輸入米に頼ることになった。「店頭には米がない」「価格が高騰した」との苦情が市消費者センターへ寄せられ、巷間では「平成米騒動」と呼ばれた。米は六年三月から表12の価格で販売された。国産米は四月から高騰し、六月には五キログラム一袋が四四〇二円になった。外国産米は単品では売れないうえに国産米価格を吊り上げるとの理由から、外国産米と国産米とのセット販売がなされたが、八月に国産米単品価格が低下したため廃止された。十月には新米が出回り価格も下がり安定したため、外国産米の店頭販売は十一月以降には姿を消した。タイ米は澱粉質が少なく食味に慣れないこともあり、不人気なために、「美味しく食べるタイ米」料理講習会も開かれた。「平成米騒動」では、「食生活の見直しや米の買いだめをやめ、さらに外国に対する偏見をなくしたい」(暮らしのニュース NO.325)という女性も多かった。
表-12 「平成米騒動」時の札幌市内米平均価格(5kg入り1袋)(単位:円)
平成
6年
国産米外国産米国産・外国産ブレンド米国産・外国産セット販売
3月3,4582,146
4月4,4311,9322,5952,656
5月4,5391,9352,5252,670
6月4,4022,0032,5762,670
7月3,8921,8192,5132,628
8月3,1501,8422,4452,282
9月2,5171,5602,0372,438
10月2,8081,7792,149
11月2,533
『消費者行政事業概要』平7年度より作成。


写真-3 輸入米の本格流通前に店頭から姿を消した国産米(道新 平6.3.1)

 これらの消費者物価指数をはじき出す指定品目は、表13のように時代に応じて変化した。高度経済成長期に家電製品が普及するとマッチやわら半紙、ラジオ聴取料が消え、平成二年はワープロ、ハンバーガー、レンタルビデオ代が追加され、石炭やレコードが消えた。七年にはカラオケルーム代、十二年にはパソコン、携帯電話代、牛どん、温水洗浄便座が追加され、珠算塾月謝、扇風機、さけ缶詰が姿を消した。これらの物資の変遷は、戦後の生活史を物語っている。
表-13 消費者物価指数の主な商品の改廃(昭和35年~平成12年)
主な追加商品主な廃止商品
昭35
(1960)
テレビ(白黒)、電気冷蔵庫、電気アイロン、家賃(公営)マッチ、わら半紙
 40
(1965)
電気掃除機、乗用車、即席ラーメン、バナナラジオ聴取料、うずら豆、駆虫剤
 45
(1970)
コーラ、テレビ(カラー)、ボーリング代学生帽、ズボン下、かんぴょう
 50
(1975)
ステレオ、学習塾月謝、ガス湯沸かし器、テニスラケット鯨肉、合成清酒、足踏み式ミシン
 55
(1980)
電子レンジ、輸入牛肉、ゴルフクラブテレビ(白黒)、電報料、削り節
 60
(1985)
エアコン、ビデオレコーダー、下水道料金甘納豆、れん炭、運送料(鉄道)
平2
(1990)
ワープロ、レンタルビデオ代、ハンバーガー石炭、レコード、かりんとう
 7
(1995)
宅配ピザ、テレビゲーム機、カラオケルーム代魚肉ソーセージ、コンビーフ缶詰、クレンザー
 12
(2000)
パソコン、サッカーボール、携帯電話代、発泡酒、牛どん、温水洗浄便座珠算塾月謝、軟式野球ボール、扇風機、さけ缶詰
『道新』(平13.10.2)より作成。