相次ぐ訃報、そして指導的人物や文芸愛好者自体の高齢化は深刻な現実的課題である。しかしそれを逆手にとったユニークな試みも札幌で始まった。平成七年、北海道川柳研究会が発した「川柳ボランティア宣言」は、会員が老人施設などを訪問し、ともに川柳創作を楽しむという活動である。市民生涯学習講座でも川柳は人気が高いが、高齢者宅の屋根の雪下ろしを手伝うなどさまざまなボランティア活動は、明るい話題を提供した。
札幌在住の作家・原田康子、高橋揆一郎、藤堂志津子、荒巻義雄、東直己らの充実した仕事はもちろん、新世紀の担い手として、札幌出身の谷村志穂がめざましい活躍をしている。平成二年のノンフィクション『結婚しないかもしれない症候群』が話題を集め、翌年『アクアリウムの鯨』で作家デビューをした谷村は、一五万部以上のベストセラーとなった『十四歳のエンゲージ』や、『ハウス』『ナチュラル』、エッセイや講演など、積極的な活動を行っている。札幌在住では、北城恵が六十一年に『西洋すぐりの記憶』で第六回女流文学新人賞を受賞し、『終わりは淫らな雨(みだらなあめ)』『恋愛適齢期』などを相次いで刊行した。『北方文芸』で活躍した桃谷方子は、『百合祭』『青空』を十二年に出し、高齢者の恋愛をテーマとした『百合祭』は映画にもなった。同じく『北方文芸』の新鋭であった水木ゆうかは、十二年に『真夜中のシスターン』上梓後、ホラー小説などを次々に出版、脚光を浴びている。
また、児童文学も二人の実力派を生みだした。たかどのほうこ(高楼方子)は六十二年に五二〇枚の長編ファンタジー『ココの詩』でデビュー以来、自筆画による絵本・幼年童話集などを毎年数冊刊行し続け、全国の読者を引きつけている。広鰭恵利子(ひろはたえりこ)も六年に『ホントの敵はどこにいる?』でデビュー後、『牧場の月子』『潮風―トッカリの来る海で』『そして、死の国へ』などを立て続けに上梓した。
詩でも、十年に第三六回現代詩手帖賞を道内在住者で初めて受賞した本間淳子や、松尾真由美『密約 オブリガード』の第五二回H氏賞受賞(十四年)など、吉報が続いている。女性たちの活動を軸に、札幌ゆかりの作家たちの黄金期はふたたび訪れようとしている。