美術作品の創作・鑑賞活動が活性化するには、批評や評論、普及などの出版活動は不可欠である。札幌においては『美術北海道』(北海道美術出版社発行、昭和三十七年~四十年)がその美術情報誌の最初であり、同時にそれが美術批評活動のスタートの時でもあった。その終刊後、それまでの出版業務とともに編集メンバーをそっくり移行させ、昭和四十一年に発足したのが『美術ペン』(大丸藤井発行)だった。
美術情報誌としてこれに並ぶのが、時計台ギャラリーが発行する『21ACT』である。これは美術に関する情報を幅広く盛り込み、昭和四十六年に機関誌『21ACT』(Art Column Tokeidai)として創刊、短期間ながら一時期休刊したが五十二年に『21ACT通信』と名称を変えて復刊、さらに名称を『21ACT』に戻し現在に至っている。現在進行形の札幌の美術を冷静、的確な眼で長期にわたって見据え続けて止まないこれら二つの情報誌の存在意義は、きわめて大きなものがある。
北海道の美術を歴史的、体系的にまとめた著書も出版された。さっぽろ文庫として『札幌の絵画』(昭56)、『札幌の彫刻』(昭57)、個人による単行本では『北海道美術をめぐる25年』(吉田豪介著、昭58)、『北緯43度―美術記者の眼―』(竹岡和田男著、昭62)などがある。中でも『北海道の美術史―異端と正統のダイナミズム』(吉田豪介著、平7)は、昭和三十年代後半以降の北海道の現代美術の動向を精細な記述により明らかにしたもので、優れた記録性とともに深い洞察が高く評価された。
美術の専門職員(学芸員)を擁する美術館の出版活動も多種にわたった。展覧会図録や研究紀要のほかに普及を主目的にした「ミュージアム新書」(北海道立近代美術館編・北海道新聞社発行)は、昭和五十六年以来毎年一冊ずつ、主として北海道ゆかりの美術作家の人と作品について評伝スタイルの叢書として全国に発信されている。このほか作家自身が刊行する作品集が急増したことや、企業の美術文化支援活動としての『小谷博貞画集』(平8)や『栃内忠男画集』(平10)など豪華作品集の出版も永く記憶されよう。