公立の文化施設はどんな努力をしても独立採算は成立しない。予算での運営費の補助が不可欠だ。(中略)総花的に幅を広げることで不十分な支援しかできないよりも、一点に絞り込むことで、住民の手による劇という文化を育て、その成果を観客に返していくことができれば行政効果があがることになる。
(児童演劇 第四五六号)
という劇場関係者の主張は明快だ。しかも使用料は子どもの芝居の場合、減免となり、機材使用料も取らず入場料収入の五~一〇パーセントだけ、練習は無料である。また、照明・音響・舞台のスタッフが常勤し、時間延長・早出・休館日の使用などもできるだけ対応している。道具の製作には工作室もあり、札幌市広報誌や機関誌『こどもの劇場通信』で宣伝もしてくれる。このような好条件で、こぐま座では不可能だった児童劇やミュージカルが次々と生産されたのは当然といえよう。
その一方で教育文化会館は、前出の演劇の夕べに加え昭和六十年から養成のための教文演劇セミナー、夏の何日間か市内の劇団へ提供する演劇フェスティバルの二つを開設したものの、期待されていた演劇の夕べは平成五年で終了し、セミナーも十年には中止となる。この二つの劇場の現状は、公立劇場のありようを考える最適なモデルだ。
また、六十一年にオープンの札幌芸術の森は、東京のつかこうへいの芝居上演、舞台制作研究事業として森の会の結成などを試みたが、大きな成果ありとはいえないだろう。