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越 畔
つい先月(14日)まで淋しいさびしいと言つた寮も一変して、今では却つて騷々しいと思ふようになつて来た。
何分40名といふ多数の新家族を一時に得たので、其『嬉しさ』と『珍しき』感が交々(こもごも)生じ、又我は彼等の兄であるといふ一種の誇りを覚えた時の愉快さったら、今に尚(なお)忘れぬ。
18日(4月)には18号にも記載せられてあつた通り、金比羅山にて花見会を催したが、惜しい事には雨に襲はれて十分余興を尽し得なかつた。それで例に依(よ)つて西寮の階上14・15両室を会場に充てゝ、此に再び盛なる余興を始めた。
其中で最も感興を引いたはH君の○○○、C君!君の○談である。其他各得意とする新体詩・詩吟・唱歌・舞踏等いづれも柏手喝釆を以(もっ)て迎へられたが、其間には新任炊夫の手になつた寿司などが運ばれる。皆々舌鼓を打鳴らして散会したのが6時であった。
図書室兼娯楽室には毎日大入にて、殊(こと)にクロツクや囲碁などでいつもパチパチ音がする。近来はまた大分(だいぶ)金魚が流行し出した。又芳香を放つ奇麗な草花などの机上に飾られてある室も見受られる。