日月図(じつげつず) [目録を見る] [ 宝物解説へ ]
本屏風は、現在は空気中の硫化水素によって黒ずんでいるが、元は銀箔地で、玲瓏な光を放っていたと考えられる。右隻には柴垣、桜、枝垂れ柳、わらびなど早春の花木が描かれている。左端には、かきつばたの植わった水の流れが描かれ、左隻へと続く。左隻には、右隻から続く水流、萩、紅葉、網代垣、松が描かれ、松の緑の上には雪が描かれていたようである。つまり、四季が移りゆく様子が右から左へと描かれているのである。
四季の景物を配した四季絵は、平安時代以来の伝統を引くものであるが、勝興寺本には、さらに右隻の雲間に金の日輪、左隻に銀の三日月が置かれている。日月を描くことは、宗教的な儀礼に起源を持ち、単なる装飾に留まらない意味を持っている。勝興寺のような規模の寺院にふさわしい調度である。
なお、本来の使用状態ではない直線状態の写真では、網代垣の屈曲が不自然に見えるが、おぜを適度に折り曲げれば安定した構図となる。
(高田克宏)
【参考文献】『浄土真宗と本願寺の名宝Ⅰ-受け継がれる美とこころ-』龍谷大学 龍谷ミュージアム,平成28年(2016)