竹取物語(たけとりものがたり)
[目録を見る] [ 宝物解説へ ] 竹取物語の冊子本である。外題は、上中下それぞれ「竹取物語」「たけとり物語」「竹とり物語」で、表紙は、紺地に金の雲竜に宝尽くしの紋様の金襴。制作は、17世紀後半とみられる。
内容は、「かぐや姫」としてよく知られるように、竹取の翁という者が竹の中から見つけ出して育てた小さな女の子が、美しく成長し、貴公子たちに熱心に求愛されるが難題を課して退け、最後には帝の求婚も退けて、月の世界に戻ってゆくという物語である。
姫に去られ傷心の帝は、姫が形見に置いていった不死の薬も最早不要と、それを天に最も近い駿河国の山で燃やすよう命じる。たくさんの士(つわもの)が命を受けて登り、薬を燃やしたので、その山を富士(不死と、多くの<士>に掛ける)と名付け、その煙は今も山頂に立ちのぼっているという。
こうした絵入り写本は、明治時代以降、奈良絵本と呼ばれるが、制作地は京都と考えられている。古いものは絵巻物の形式で、後に冊子の形式で制作されるようになった。現在、勝興寺には他にこうした絵入り本は残っていないが、豪華な嫁入り道具として持参されたセットの一部かもしれない。