源氏物語絵(若菜)

源氏物語絵(若菜)蹴鞠源氏物語絵(若菜)女楽


源氏物語絵(若菜)(げんじものがたりえ・わかな)     [目録を見る]   [ 宝物解説へ ]
 源氏物語より、「若菜・上」の蹴鞠と「若菜・下」の女楽の場面が各幅に描かれている。夕霧たちが蹴鞠に興じるうち、猫が御簾をまきあげ、柏木が女三宮の姿をかいま見、運命の恋に陥る場面と、朱雀院の五十の御賀のための試楽に、女三宮は琴(きん)、紫の上は和琴(やまとのこと)、明石の女御は筝(そう)の琴、明石の方は琵琶を奏する場面である。若菜の中でも、不倫に通ずる蹴鞠の場面や紫の上が病に倒れる前夜である女楽が選ばれているが、源氏絵は江戸時代、姫君の婚礼調度に用いられることが多かった。物語内容よりも、梅と桜、王朝的なイメージを描くことに主眼があったのであろう。
 落款印章はないが、箱蓋表に源養福筆と記されている。これは、木挽町狩野の当主・狩野晴川院養信(せいせんいんおさのぶ)の弟子で、阿波藩御抱絵師として知られる源養福(おさよし)(中山鍮次/?~1849)である。師同様、古画学習の成果を活かした明るく華やかな源氏絵である。

(高田克宏)


【参考文献】特別展『とやまの寺宝-花鳥山水 お寺に秘された絵画たち-』富山市佐藤記念美術館,平成26年(2014)