鉄線定紋散し蒔絵厨子棚(てっせんじょうもんちらしまきえずしだな)
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勝興寺第10代住職・顕幸(1555~1604)の室となった、越前国の戦国大名朝倉義景(よしかげ)(1533~73)の息女・松姫の婚礼調度の一部である。
この厨子棚は室町時代末期の大名婚礼調度の典型的様式を持つものである。全面を細密な金梨地で覆い、金銀研出蒔絵の技法を駆使して、巴紋と朝倉家の家紋である抱き茗荷(みょうが)および鉄線花唐草模様を巧みに描き出し、室町時代特有の繊細優美な趣を遺憾なく発揮している。室町時代の末に伊勢貞陸によって著された『嫁入記』には、輿入れ行列に加えるべきものとしての第2番目に厨子棚が記されているという。一ノ棚、二ノ棚、三ノ棚、四ノ棚と、二と三、三と四の棚の間に観音開きの局を設けた形式は、対となる黒棚とともの室町時代に発達したとされる。
(高田克宏)
【参考文献】『高岡の名宝展』高岡市美術館,平成21年(2009)