浄土真宗の絵画

 

(じょうどしんしゅうのかいが)

【美術・工芸】

浄土真宗にあっては、絵画や名号は教団の形成、組織化と深いつながりをもって展開した。初期真宗門流では、寺院や道場の本尊として名号、阿弥陀如来画像、光明本尊などが、真宗の宗教的系譜を物語るものとして高僧連坐像や四種絵伝などが用いられた。名号については、親鸞以下本山歴代住持直筆のもののほか、籠文字に蓮台と放光を添えた装飾性の高いものもしばしば作られた。阿弥陀如来画像の中では、正面向き独尊像がやがて方便法身尊像へと展開していく。光明本尊は名号・阿弥陀如来画像・高僧連坐像を複合し、初期真宗の宗教理念を総合的に視覚化する。高僧連坐像は、インドから中国を経て日本へと浄土信仰が伝播するにあたって功績のあった僧たちを描き一種の浄土教思想史を展開するものや、真宗内部における自派の師資相承の系譜を示すものがあり、総じて真宗自体や自派の宗教的正統性を語る。四種絵伝とは、善光寺の阿弥陀三尊のインドからの伝来の経緯とその利益を説いた善光寺如来絵伝、日本の仏教の始祖として聖徳太子の伝記を示す聖徳太子絵伝、真宗の宗祖親鸞とその師匠法然の、それぞれ生涯を示す親鸞絵伝と法然絵伝の4種の絵伝を指し、真宗に至る仏教史や真宗特有の宗教観を物語る絵画として、多くは掛幅で制作された。このような初期真宗の絵画を伝える寺院としては、豊田市内では皆福寺(松平地区)、善宿寺(挙母地区)、徳林寺(旭地区)、いずれも高岡地区の徳念寺、真浄寺、浄願寺、いずれも小原地区の教聖寺、善明寺、いずれも石野地区の如意寺、清通寺が挙げられる。とりわけ戦国期に教団が形成された本願寺では、蓮如以降、地域門徒の真宗道場(後に寺院化)に対する本尊等(掛軸類)の授与により、門徒・道場の教団組織化が大規模に進められた。まず、方便法身尊像、親鸞像、本願寺前住像等が授与され、さらに江戸時代にかけて聖徳太子像、七高僧像、親鸞絵伝等が授与され、道場の寺院化がなされていった。

『新修豊田市史』関係箇所:21巻182ページ

→ 皆福寺弘願寺光明本尊七高僧像守綱寺の仏教絵画聖徳太子孝養像親鸞絵伝親鸞像善光寺如来善宿寺の仏教絵画徳念寺如意寺如意寺の仏教絵画方便法身尊像名号蓮如絵伝