寒川火山噴出物層は函館山の西海岸の穴澗や寒川地域から中尾根を経て、更に谷地頭町の東側海岸まで広がっている。しかしこの地層の下部は明らかでない。このように寒川火山噴出物層は分布が限られており、時代の明らかな地層との関係がつかめないのでその時代については明らかでないが、おそらく中新世末期の海底火山噴出に伴う火山灰や火山岩礫が水中で堆積して出来たもので、集魂凝灰岩、集塊溶岩および塊状の溶岩などから成り立っている。集塊凝灰岩中には角礫の間を埋める褐色凝灰岩と一緒に、不規則な状態でシルト岩(泥岩)がかなりはさまれており、この地層が海底で堆積したものであることを示している。溶岩部も集塊凝灰岩を構成している角礫も、共に石英安山岩質で50センチメートル前後の大きさを示し、いろいろの岩相のものが見られる。全般に変質しているが、特に寒川から谷地頭にかけての部分は変質が著しい。ここでは岩石がかなり緑色化あるいは褐色化しており、中に多数の細かい黄鉄鉱が含まれている。この変質部の一部には硫黄の細脈が認められ、明らかに硫黄鉱床の生成に関係する変質であることを示している。また部分的な珪化が行われ、重晶石が伴われている。
寒川火山噴出物層は函館山における最も古い地層で、函館山の土台を造るものとみられる(鈴木 長谷川 1963)。