第1図 北海道を中心とした生物分布境界図
1.シュミット・ライン | 2.宮部ライン |
3.石狩低湿地帯 | 4.ブラキストン・ライン |
5.八田ライン | 6.黒松内低地帯 |
フリードリッヒ・シュミット(Fridrich Schmidt)は、ロシア地学協会の要請により樺太(からふと)の地質調査(1869~71)をし、その報文「樺太島とアムール地方旅行記」(Reisen im Amurlande und auf der Insel Sachalin.)によって、幌内川低地帯(幌内川口より間宮海峡に面するムガチ、タンギ付近に至る間)を境として植物相の相違することを指摘した。その後、工藤祐舜は精密な再調査を行い、エゾマツ、トドマツをはじめミズナラ、ハルニレ、オヒョウ、ニレ、シナノキなどの北海道的な樹木とササ類はここから北には分布せず、これより北側はグイマツ、ハイマツ、ツンドラの植相となることをつきとめてシュミットの指摘を立証した。そして、工藤は幌内川低地帯を温帯と亜寒帯の境界とし、シュミット・ラインと呼称することを、オーストリア植物学雑誌昭和2年刊に、「北日本と樺太の植物区系地」(Ueber die Pflanzengeographie Nordjapans und der lnsel Saghalin,in Oesterr.Bot.Zeits.Bd.Lxxv,Ab.4,1927.)なる論文をもって発表した。(第1図参照)