函館地方生物分布の特質

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 従って、道南は北海道とはいえ東北北部と共通種の多い温帯北部に属し、函館地方はその南端に在って本州的要素の最も濃厚な地域である。このことが、函館地方の生物分布上の特質ということができる。
 つまり、北海道全体が本州系からシベリア大陸系への移行地帯であると概観されているが、津軽海峡より黒松内低地帯石狩低地帯と北上するにつれて本州系の密度が希薄になっていく。本州系の最も濃厚な函館地方は、特に植物においては顕著で、種の数にして約75%が本州北部との共通種である。
 函館の西方約80キロメートルの、檜山郡江差町字五勝手に、本州系ヒノキアスナロの北限地と、北方系アオトドマツの南限地とがほぼ隣接して存在していることは、この間の事情を端的に物語っていて、いかにも象徴的である。なお、両種の自生地は大正11年10月12日付で天然記念物の指定を受けている。

エゾタカラコウ(寒地系) 函館山


ジシバリ(本州系) 函館山