縄文土器の初期には単純な器形で、あまり装飾的でない尖底土器が作られる。尖底土器は北海道から東北、関東など東日本から西日本にまで共通し、時代の流行ともいえる。この時期を過ぎると大形で装飾のある土器の時期となり、それがやや中形の器形まで装飾化される。そして器形の素朴さと、文様の簡素化の時期を経て、繊細な文様を、小形で多様化した器形のそれぞれに施される時期となる。数千年間の縄文文化を土器の移り変わりでみると、それぞれの時期ごとに特色をもった傾向がある。それらの時期は土器形式によって細分化されているが、土器形式の年代はすでに述べたように、遺跡から出土する放射性炭素による年代測定と山内説ではかなりの開きがある。しかし、先史時代の年代測定法としてポテジュームアルゴン測定法、黒曜石水和層による年代測定法などの研究も進められているが、1、2万年以下の年代測定法では14Cによる放射性炭素の年代測定法が一般化している。遺跡から出土する木炭、骨、貝殻などが年代測定の試料であるが、測定値は試料採集時の条件で誤差が生ずる。例えは土中から発見されて時間をかなり経過したもの、雨などに当ったもの、近くに新しい木炭などの混入があるものなどである。また、この年代測定値にはプラス・マイナス何年かの時間差がある。
北海道で調査した遺跡の年代を挙げると次のようである。
縄文・早期
7700±200年B・P(胆振・虎杖浜遺跡)
7130±120年B・P(釧路・東釧路貝塚)
縄文・前期
6800±225年B・P(北見・美里遺跡)
5190±70年B・P(胆振・虎杖浜遺跡)
縄文・中期
4530±350年B・P(函館・西桔梗E2遺跡)
3920±105年B・P(函館・西桔梗D遺跡)
縄文・後期
3270±110年B・P(函館・日吉遺跡)
3230±160年B・P(胆振・植苗遺跡)
縄文・晩期
2450±120年B・P(室蘭)
2440±120年B・P(室蘭)
(年代測定値B・Pは西暦1950年を基準とする。)
これらから縄文時代の5期区分のおおよその年代が推定できるが、実際には土器形式による年代の違いがあり、同一遺跡で出土した試料を何点か測定しても同じ測定値が出ないので、絶対年代とはいえない。