日吉遺跡のストーン・サークル
このころの居住地は、墓域から見下ろせる南の沢に近いところにあった。住居は円形の竪穴住居で、竪穴の内壁に沿って柱を建てているが、柱穴がなく溝状になっているので、住居壁を割木などで囲んで屋根を葺いたものであろう。住居内には炉が設けられておらず、発見された炉はすべて野外炉であった。1号住居址と呼んでいる住居には入口がある。住居の片側で南西に向いているが、この入口は突き出た形で細い柱穴が3列に並び、その1列は住居の外側にある。入口の幅は1メートル、屋外に出ている部分が70センチメートルほどである。3列の柱穴は人の出入りと物置きの仕切りであったのであろう。野外炉の形は、円形のものとコの字形のものとがある。円形炉が発見された位置は、ストーン・サークルの真南で、直径90センチメートルもある大形のもので、偏平な自然石で枠組みがしてある。この近くには完形土器の包含地があって、炉からクルミや木炭が出土し、三角形の土製品で両面に童顔のあるものや、土製の人形などが出ており、祭場的な場所であったように考えられる。コの字形の炉は住居に近い位置にあり、やはり自然石の石組みがあって、灰の堆積もある。長径が80センチメートルと大形であり、炉から石鏃が3点発見された。獲物を料理した時に体内に突き刺さっていたものかも知れない。野外炉が大きいのは共同で使用したためでもあろう。