薬物と売薬行商

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 アイヌは野生の草根木皮を経験によって薬に使用したが、和人は種々の薬物を発見し、幕府の採薬使がしばしば派遣され、天明元(1871)年の『松前志』には、132種もの薬物が出ている。人参・附子(ぶし)・イケマ(毒消し)・エブリコ(落葉松に寄生する菌(きのこ))・膃肭臍(たけり)・熊胆・鹿角・オクリカンキリ(ざりがにの石)など有名であるが、別に箱館近在の薬草として、川芎(せんきゅう)・忍冬(すいかずら)・苟薬(しゃくやく)・木通(あけび)・和附子(とりかぶと)・黄蓮(おうれん)・半夏(ほそぐみ)・蒼求(おけら)・沢潟(おもだか)・豨苓(いのくそぐさ)・商陸(やまごぼう)・葛根(かっこん)・厚朴(ほう)・大黄(だいおう)などが見られる。売薬行商では松前の才田屋勘七・斉藤平角・富山反魂丹の太田屋などが有名である。