民間信仰

700 / 706ページ
 神社のなかにも、薬師、観音、稲荷、龍神など、民間信仰に端を発したものも少なくない。永享の鰐口の銘にみる「山神」は、文字通り山神信仰である。橡(とち)の連理木を信仰するものもあれば、庚申の祭祀もある。蛭子、大黒については、前者に蛭子講あり、後者は大黒町の名まで生んでいる(若狭屋なる漁家でこれを祭り、それから町名が生まれた。その大黒はのちに実行寺に納められた)。実行寺の裏山には七面の信仰が生まれ、一般には仏教を本旨とする観音や地蔵の信仰も盛んであった。また性器崇拝もあって、石製の金精神や、エンギと俗称される張子の男根などがあり(これは明治5年に禁止されている)、イタコによるオシラサマ信仰もみられ、イジナ(じつは飯網(いづな))の俗信もあった。『渋田翁雑記』に、箱館八幡宮の祭りの山車にまつわる鬼人形の話があり、鬼人形が亡霊を封じたことが述べてあるが、東北地方にみられる鬼人形による悪病退治と同義のものである。