第2議会への請願

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 函館の第2議会への請願運動が動き始めるのは、札幌・小樽からの働きかけであった。11月22日、札幌の北海道毎日新聞社社長阿部宇之八、小樽の北門新報社社員山崎知遠と室蘭の本多新が来函、これを受けて函館でも請願のための準備が開始されるのである。25日に開かれた評議員会には20数名が参会、協議の上馬場、工藤、上嶋、尾崎幾三郎の4名を総代に選出、来函中の阿部、山崎らと話合うことになった。4名は阿部らの宿を訪ね、函館、札幌、小樽が、各々、全道一致の方向で運動を進めることで話がまとまった。11月27日、総代4名と平出喜三郎が発起人となり、阿部らの慰労会が金仙楼で開かれ、さらに29日に中島楼で、阿部、山崎、上嶋に、「北海」社員の熊田宗次郎、青木清治郎、佐瀬得三が加わった新聞記者懇親会がもたれ、30日、阿部、山崎は函館を去ったのである。12月5日、町会所で請願有志総会が開かれ、江差の関川与左衛門、加藤重兵衛、福山の菊地純次郎、静内の西田玄次郎、有川村の種田金十郎を加えて50名が参会した。総会の提出議題の原案は次の如くであった。
 
一 板垣伯一行招待の顛末
一 政務調査の顛末
一 本年度に於て請願すべき北海道議会の権限其他要領
一 請願書調整の事
一 請願上京委員撰定の事
一 評議員委任条件概定の事
一 他地方有志と交渉の事
(明治二十四年十二月三日「北海」)   

 
 この会議では、請願運動の連合の件は報告にとどめられた。第1議会請願においては、函館の殖民議会的権限をもった北海道議会要求に対し、札幌は地方議会設置、国会議員選出、小樽は札幌の要求に加えて、特別自治制施行希望が強く、3地区が別々に請願運動を行ったのである。第2議会への函館と札幌、小樽との請願内容の相違は表3-7の通りであるが、重点は「四項目中国会へ議員を撰出するの項は函館有志同意せず又た函館有志者の主張する地方議会を開き事業費の諮詢を受くるの一項は当区(札幌)有志者の同意せざる所」(明治24年12月5日「北毎」)とあるごとく、国会での北海道事業費決定への北海道側の参与の仕方の相違、すなわち、北海道から衆議院議員を選出するか、北海道議会に事業費諮問の権限を与えるかにあった。
 
 表3-7 第2議会への請願内容の異同
札幌・小樽の請願内容函館の請願内容全道一致の請願内容
第1項北海道事業費600万円を支出する事北海道事業費600万を150万円とする事北海道事業費150万円支出する事
第2項北海道地方議会を設置する事北海道議会(事業費の諮問を受くるもの)を設置する事北海道議会(事業費の諮間を受くるもの)を設置する事
第3項特別自治制を施行する事区町村制度を改正する事区町村制度を改正する事
第4項北海道より特に衆議院議員を選出する事衆議院議員を選出するの一事は削除する事北海道より特に衆議院議員を選出する事

 明治24年12月8日「北海」の社説、その他により作成。
 
 12月13日、町会所に50余名が来会し有志大会が開かれ、次の議題が協議された。
 
本道各地より帝国議会に請願すべき公共問題に付札幌小樽其他の地方より連合の儀照会に対し可否の件
本道より衆議院議員撰出請願
事業費増加請願
本道に区町村制施行の件に付同意を表し及び議会の権限に各地の同意を求むるの件
(明治二十四年十二月十五日「函新」)

 
 大会では請願運動の全道連合が全会一致で可決され、請願内容では区町村制を改正する事、北海道事業費を150万円にすること、北海道より衆議院議員を選出することが決定された。他方18日小樽より函館に対し、函館の決議の通り、札幌、小樽ともに決定した旨の電報が届き、ここに函館と札幌・小樽との連合が成立したのである。
 上京委員には評議会において上嶋と竹内与兵衛が選出され、上嶋は19日上京の途につき、21日に着京、竹内も22日の評議員会の議を経て24日出発、26日に着京した。しかし、衆議院は12月25日、民党の予算大削減の可決を引金に解散となり、高津提案の「北海道議会法律案」も審議中止となったのである。明治25年2月18日には、町会所で北海道議会請願有志大会が開催され、上京委員の竹内、上嶋が上京運動の報告を行っている。