営業内容

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 前に勧商局・開拓使の保護下にある広業商会が函館の貿易取引に介入するにいたるまでの経過をみたが、それは実際の営業内容はどうであったのかを次に述べよう。
 創業年の9年はわずか3か月の営業期間であったために資金貸与は実施されなかった。前述した10年5月の「定約」および「手続書」の改正により広業商会が昆布など4品を対象とする開拓使税品、資本金貸与による償還品、資本貸与によらない買上物品を集荷する機能を持つようになった。ほかに「委託販売貨物取扱規則」と「荷為替取扱規則」を定め、一般の委託販売や荷為替貸出もあわせて取り扱った。また産地において必要とする日用品などの経営諸品の調達も行うことも定めた。これは広業商会による仕込経営ということができよう。もっとも仕込商人と異なることは資金貸与にさいしては抵当を設定しないで貸付を行うことであった。こうした集荷方法により広業商会の扱った金額は表6-26のとおりである。11年度の収税品の扱い高が少額であるが、その理由は不明である。12・13年度は収税品と償還品の扱い高はほぼ同額であり、これに買上物品、委託品の順となっている。収税品については「定約」で定められているように昆布煎海鼠干鮑、鯣の4品に限定されていたことはいうまでもない。この4品目のうち資本を必要とするのは主に昆布生産であったことから必然的に4品に占める昆布の資本金貸与による償還品の比率が高かった。一例として11年の4品の資本貸与高をみると昆布が14万3522円、干鮑6261円、煎海鼠5945円、鯣5297円であり、昆布が圧倒的な比率を占めている。広業商会は原則的には、これらの貸付高に応じて収穫品をもって償還させたのである。
 
表6-26 広業商会物品収入額  単位:円
年 度
収 税 品
償 還 品
買上物品
委 託 品
明治11
12
13
33,268
180,869
109,025
143,368
178,314
110,022

113,041
89,401
87,741
88,414
75,435
264,377
560,638
383,883

 各年度「函館商況」(北海道立文書館蔵)より
 年度は7月~翌年6月、*は収税品に含まれる.
 
 一方、買上物品の品目は多様化している。13年度の例でみると、前記4品の他に魚肥、塩鮭、鹿皮、硫黄など10品目にもおよび、これらの金額は買上物品額全体の30パーセント前後を占めている。これは広業商会が単に貿易商社として清国貿易にかかわるのみならず、国内における流通業にも食指を伸ばしていることを意味した。また輸出物品であっても国内支店網を生かして清国相場より国内相場が高い場合は輸出しないで国内で売却することもあった。こうした動向を示す一例をあげれば『西南諸港報告書』に掲載の大阪における北海道産物取扱石数人名表をみると、明治12年9月から翌13年9月の広業商会の扱い高は2万2000石で金沢仁平の2万5000石についで2位であり、さらに13年9月から14年5月では5万5000石と他の業者を断然引き離してトップの座を占めている。