昭和七年、市立函館図書館の岡田健蔵、大垣友雄、田畑幸三郎らが桔梗サイベ沢遺跡の発掘調査を行い、縄文人のほぼ完全な人骨一体分を発見しているが、この調査は函館で行った考古学の最初の学術調査である。縄文人はアイヌ民族かあるいはそれ以外の民族かという日本民族の起源についての論争があっただけに、縄文人骨の発見は重要な意義を持っていた。岡田がサイベ沢遺跡を発掘した理由は、函館においてアサリ坂貝塚(づか)や青柳町貝塚など重要な遺跡が次々に失われて行ったことと、函館の先史時代や歴史に異状なまでの関心を持っていたからである。岡田はこのほかにも函館の先史時代の遺跡分布図を出版したり、『函館毎日新聞』などに「コロポックル人種とアイヌ人種」などの所論を発表し、郷土の文化遺産を紹介するかたわら、各種の文化資料収集に努めた。