製氷業者の増加

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 明治十年代から氷の価格も下がり、ようやく庶民も飲料用、食料貯蔵用、医療用として利用できるようになり、更に魚貝類の輸送などにも使用されるようになった。このため氷の需要は急上昇し、明治十六年には機械による製氷が東京製氷会社によって行われ、ますますその傾向が強まり、かつ競争も激しさを加えるようになった。
 『函館地方ニ於ケル凍氷業』(北大図書館蔵)によれば、「(明治二十二年)当時内地ニ於ケル凍氷業ノ状況一班ヲ視ルニ同業者ハ既ニ三府十三県ニ蔓延シテ採取場二百六十余ケ所、産額一ケ年約二万三千噸ニ上ホリ、東京、横浜、大阪、神戸ノ如キ重ナル凍氷需要地ニ於テハ各製氷者間ノ競争大ナルモノアリシニ関ハラス函館氷ハ優ニ其ノ競争ニ耐へ、着々成功ノ実ノ現ハレタルヨリ函館地方ニ於ケル凍氷採取業ハ其地歩弥固ク、同業者ノ数亦タ次第ニ増加シテ産額年ト共ニ高マリ」とある。明治初年では、わずかに中川嘉兵衛のみであったものが、明治十四年ころから個人的に試作する者が現われ、次第に本格的に生産するようになった。以下主なものを挙げて見ると、明治十六年東川町で小沼庄助、明治二十二年石川村で村井文治、明治二十八年桔梗村で守田岩雄が製造を始めた。製造場所も最初は五稜郭の外堀がその生産の中心地であったが、明治二十二年五稜郭外堀貸与規則の変更により、中川は借入れを中止し、神山村に伐氷場を求めた。明治二十三年七月二十三日付『函館新聞』によれば、五稜郭外堀を中川は一か年五〇〇円で拝借していたが、大倉組はこれを二、二五〇円で入札したと記されている。
 また、他の製造業者もそれぞれ所在の村に池を作り、伐氷場としたので、亀田村、鍛冶村、石川村、中道、神山村などの地域にその中心が移動し、明治二十五年には七ヵ所、明治三十五年には一二か所、三十六年から三十八年にかけては二四か所の伐氷場が設けられた。
 
明治三五年の製氷業者
地  名製造者製氷噸数
五 稜 郭龍 紋八、〇〇〇 
石   川井 上四、〇〇〇 
亀田尾場七〇〇 
桔 梗 野七〇〇 
石   川山 崎二、八〇〇 
神   山北 原三、〇〇〇 
上 湯 川永 田八〇〇 
神   山金 子八〇〇 
亀田尾場上徳 田一、三〇〇 
桔 梗 野守 田二、五〇〇 
石   川一、五〇〇 
大 越一、五〇〇 
合   計一二ケ所二七、六〇〇 
(伊藤鋳之助秘録 函館工事調)

 
明治三〇年代の製氷業者と製氷池面積・生産量
場        所従  業  者坪  数  (坪)産  額  (屯)
三八年三七年三六年三八年三七年三六年三八年三七年三六年
大字亀田村大川通三番地金 子 孝太郎一、二〇〇一、二〇〇一、二〇〇五五三八〇〇四〇〇
五稜郭外濠山 田 啓 助一七、〇〇〇一七、〇〇〇一七、〇〇〇四、七〇〇五、九〇〇九五〇
亀田村大字鍛冶村字中ノ沢十六番地高 橋 浦次郎一、二七三九九一九九一六五〇六六八二五〇
亀田村字石川野十五番地能 戸 豊 吉堀 直好三、二〇〇三、二〇〇三、四三〇一五〇二、〇〇〇一〇〇
亀田村大字神山村字関向二百八十四番地堀田常右エ門九〇〇九〇〇二四〇二四〇
亀田村字石川野七十八番地山 田 啓 助一、八九〇一、八九〇五五〇一、〇〇〇
亀田村大字石川村字一本柳八十七・八番地山 田 啓 助一、八四二一、八四二六二〇一、一〇〇
亀田村大字石川村字宮ノ下九十八番地井 上 文 治一、八〇一一、七五一一、九五〇七七六八〇〇二〇〇
亀田村大字桔梗村字桔梗野百九十四番地武  彦 七一、〇六七一、〇六七一、〇〇〇四八〇四四五一六〇
  〃      〃       百九十三番地守 田 岩 雄七五〇七五〇二〇〇五〇〇
亀田村大字桔梗村字山崎五十六番地守 田 岩 雄一、五〇〇一、五〇〇一、五〇〇八〇〇一、〇〇〇四三〇
亀田村大字石川村字一本柳七十五番地大 越 久太郎二、一〇〇二、一〇〇一、五〇〇三六〇六〇〇八〇
亀田村大字石川村字宮ノ下十四番地堀田常右エ門九五〇四二〇
亀田村大字石川村字一本柳七十四番地木久田藤四郎山崎 藤七二、七二七二、七二四二、七二四九五五一、二二七五〇
湯川村大字下湯ノ川村字戸倉七番地生 駒 鹿 蔵二、〇一七二、〇一二二、〇一二六五九六〇四二〇
  〃       〃       三十五番地船 水 米 吉二八五二八五二八五二〇〇二五〇五〇
亀田村大字亀田村字谷地頭十番地安 達 吉次郎徳田 脇太郎二、〇五二二、〇五二二、〇五二一、一四〇三二〇六四〇
  〃   〃    字中道八十二番地平 松 真三郎一、五〇〇二、〇〇〇一、〇〇〇五九〇八五〇一八〇
  〃   〃     〃  七十二番地阿 部 慎 治八五〇八五〇六五〇三五一四八〇一三〇
亀田村大字神山村字下川原北 原 鉄太郎一、九三六三、九三六三、八一四一、八〇〇二、〇〇〇五二〇
亀田郡湯ノ川村大字下湯ノ川村字滝ノ沢斉藤 於佑武六五〇八四六一四五一三〇
永田 砺一、七二六二五〇
亀田村大字石川村字宮ノ下百六十六番地井上 文治一、三一六三〇〇
大沼大沼凍氷合資会社
平松 真三郎
三三、四五一一九、〇〇〇一、四五〇
 〃下田 周次一九、〇〇〇
 〃横山 俤之助一九、〇〇〇
 〃松永 勇吉一九、〇〇〇
(函館地方における凍氷業より)