奉行の諭告と正徳の制令

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 組織的系統的な学制の確立していなかった時代において、教育の役割を担っていたのは、幕府であり、各藩であり、直接的には箱館奉行や寺子屋などであった。
 『北海道教育史』によると箱館奉行は文化二(一八〇五)年、箱館外九か所に制札を建て、「正徳の制令」を掲げ、また諭告を発して社会教育を行っていた。その内容は儒教的であり、命令的であるが、社会規範として住民が守ったものと考えられる。例えば、「親子兄弟親類仲よくすること。勤労第一のこと。分限を守ること。正直であるべきこと。博奕禁制のこと。人売買停止のこと。奉公専一のこと。」など、当時としては、法的な拘束性を有していたものである。
 また、諭書は文化三(一八〇六)年に「風俗を正しくすべきこと。人の道をふみ、倹約を守り、慈悲を行うこと。孝行を尽し家内睦まじく、老人を敬い、悪人は処分すること。」など、儒教を背景として生活上の心得を、戸川筑前守、羽太安芸守の名で明示していた。