島弧変動による地殻運動が活発化した道南では、地殻の弱線にそってしばしばマグマが噴出し、幾つもの火山ができ上がった。約一〇〇万年前に一連の活動をした(鴈沢、1992)とされる函館山(三三二・五メートル)や、市街地北の横津岳などは比較的に古い火山で、現在は侵食によりかなり姿を変えている。一方、駒ヶ岳(一一三一メートル)や恵山(六一八メートル)は、今なお活動中である。駒ヶ岳の噴火活動はきわめて活発で、寛永十七(一六四〇)年、安政三(一八五六)年、昭和四(一九二九)年六月の大噴火が今に語り継がれるとともに、ごく最近の平成八(一九九六)年三月にも噴煙を上げている。このほかにも濁川、渡島大島・小島などの火山もある。このように渡島半島に火山が多いのは、半島全体が、島弧の火山フロントと呼ばれる線の内側に位置するためであり、島弧変動による地学現象の一環と見ることができる。実は、最近、汐泊川河口の沖合い二・五キロメートルの海面下にも小カルデラを作る火山の存在が明らかにされた(山縣ほか、1989)。函館市民は、火山に囲まれて暮らしているといっても過言ではない。