津軽海峡海難防止研究会の『津軽海峡の天気とことわざ』には、津軽海峡周辺地域の天気ことわざが収録されているが、この中に銭亀沢地域(根崎、志海苔、銭亀沢、石崎)のことわざ五七例も含まれている。
銭亀沢の天気ことわざの特徴としては、第一に、すべてが毎日の天気を予測するもので、農作業に関係する季節(長期)予報的なことわざは見あたらないことである。第二には、風や波に関連することわざが多いことである。
五七例を、おおまかに天気現象別に分類してみると、
天気や降水の予測 一四例
風のふるまい 二一例
風の予測 九例
時化の予測 一三例
となり、風と時化に関することわざが四三例で全体の約四分の三を占める。これは、ことわざの採集元が漁業協同組合であることが最大の要因だが、銭亀沢の地域特性や産業構造・職業構成も反映されていると考えられる。
これらのうち、銭亀沢地区特有のことわざはごく少なく、特に天気や降水のことわざの多くは、全国各地と共通している。その反面、風や時化に関することわざは、銭亀沢の位置や地勢による気象特性を念頭に置いて解釈する必要がある。
以下に紹介することわざで用いられている地名は、銭亀沢から空や雲を眺めた時の目標となっており、北-三森山、東-汐首岬、南東-尻屋崎、南-向山(恐山山地)、南西-矢越岬、西-函館山という位置関係になっている(前掲図2・2・1参照)。