底生動物の利用と地方名称

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 底生動物には岩盤や貝殻、海藻などの基質に付着する固着動物、基質や砂泥底の表面をはいまわる匍匐動物あるいは砂泥や基質中に穴を掘って生息する潜掘動物などがある。これらの底生動物類は幼生期に浮遊生活するものが大半である。
 魚類とイカ・タコ類を除いた底生動物類のうち、主に和名のあるものについて漁業者から聞き取った地方名称と現在の利用状況を記しておく(表2・3・2参照)。
 銭亀沢で漁獲される底生動物として代表的なものは、ウニ類である。キタムラサキウニ(のな)およびエゾバフンウニ(がぜ・がんぜ)の二種があり、なかでも寒中に採れるエゾバフンウニが最も高価である。最近、対馬暖流強勢によって渡島半島の日本海沿岸や木古内で本州産のバフンウニの発見が報告されており、銭亀沢でも生息する可能性がある。
 クロアワビ(あわび)はかつて大量に採られ、干鮑(ほしあわび)に加工されて中国に輸出されたほどであったが、現在はほとんど採れない。アワビ類は元来温暖性であり、東隣の戸井町がアワビの分布境界線であることから、寒冷な銭亀沢では資源回復がすすまないのかも知れない。
 巻貝類では、ヒメエゾボラ(まつぶ)が漁獲され、焼きつぶ、茹でつぶ用として出荷される。また、小型のヘソアキクボガイ、コシタカガンガラ、タマキビなどは、食料難時代にはどの家庭でもみそ汁や茹でて食べられ、子供のおやつにもなったが、現在食用とされることは稀である。
 二枚貝類でも、岩礁に付着するムラサキイガイやムラサキインコ(まるご)、エゾイガイ(ひるかい)などのイガイ類も以前よく食用にされたが、現在では大型のイガイ類がわずかに食べられる程度で、利用されなくなった。また、平磯付近の砂地にすむアサリやヌノメアサリは春先の潮干狩りで採取され、みそ汁などの具として食べられる。
 カニ類では、比較的大型のノコギリガザミ(がざみ)やクリガニ(くりがに・けがに)が刺網やタコ漁のカゴに混獲され、茹でてよく食べられる。とくに、クリガニは津軽地方の正月料理に欠かせないという、ケガニに劣らず美味である。

表2・3・2 銭亀沢の魚類を除く主な底生動物