北太平洋高気圧の発達に伴い、道南地方は夏型の気圧配置となり、南東季節風が強くなる。この季節風は、北太平洋の湿った暖かい空気を運び、時としては近海で発生した海霧を亀田半島の津軽海峡東口に運んでくる。1916年(大正5年)7月20日の濃霧による、巡洋艦「笠置」の女那川海岸付近での坐礁など、濃霧の犠牲となった船舶の数は多い。とはいうものの、亀田半島における夏の海霧の襲来は、道東の根釧(こんせん)原野、道央の勇払(ゆうふつ)原野と比較すると小規模なもので、7、8月2か月間の霧日数は函館6日、汐首岬以東の太平洋に臨んだ恵山岬で4.9日である(恵山岬灯台 航路標識事務所気象資料による最近30年間の平均)。
恵山町は、亀田半島のコンブ生育地(ミツイシコンブ・マコンブ)の中央部に位置しており、夏期は各漁港でコンブ採取の最盛期を迎える。そして、町内海岸の乾場はコンブ干し作業に大忙しとなる。
7、8月、恵山火口原と山頂への登山道周辺には、ガンコウラン・エゾイソツツジ・コケモモ・ヒメスゲ・コメバツガザクラ・ミネズオウ・シラタマノキなど多彩な高山植物が咲き競う。この季節は、恵山のまつりの季節でもある。町内の海積(わだつみ)神社・厳島神社・稲荷神社・尻岸内八幡神社の各祭典や夏まつりなど、まちは祭り一色に彩られ、イベントが次々と繰りひろげられる。夏は7、8月の2か月で過ぎ、8月下旬になるとそろそろ秋の気配が感じられるようになる。
夏の函館と恵山は、海洋性の気候の影響を受け、日中最高気温が30℃を越す真夏日は平年で2、3日程度、25℃の夏日は30日前後が普通である。道南地方より北に位置する、道央の札幌、旭川内陸盆地の夏日は50日前後に達するので、亀田半島の海岸地方は意外と涼しい北海道の避暑地といえよう。