1951(昭和26)年9月8日、日本と48国との間に調印、全権は首相吉田茂、11月28日批准。前文と7章27条より成る膨大なものなので、まずは各章の内容を簡単に示すこととする。〈 〉は、その章に含まれる箇条を示す。
第一章 平和〈一条〉戦争状態の終結と日本の主権の承認
第二章 領域〈一~四条〉第二条で領土権の放棄、第三条で信託統治、第四条で日本の財産の処理を規定する。第二条で領土権を放棄したのは、朝鮮、台湾と澎湖諸島、千島と樺太南半、南洋委任統治地、南極、新南諸島と西沙諸島であった。
第三章 安全〈五~六条〉第五条で国連の集団保障と自衛権の承認、第六条で占領の終了(条約発効後九〇日以内)を定める。
第四章 政治及び経済条項〈七~一三条〉日本と外国との条約の効力、漁業協定、中国における権益放棄、戦犯処罰、通商条約締結、国際民間航空などの事項を定める。
第五章 請求権及び財産〈一四~二一条〉日本の賠償支払と在外財産の処分、連合国財産の返還、裁判の再審査、戦前からの債務の責任、戦争請求権の放棄、中国・朝鮮の受益権など。
第六章 紛争の解決〈二二条〉国際司法裁判所に付託する。
第七章 最終条項〈二三~二七条〉批准の手続きと効力発生、連合国の定義、この条約の署名国でない国との平和条約締結、条約文の保管などについて定める。
なお、次の重要条項(条文)につい全文を記し、若干の解説を加えることとする。
第一条(a註一)日本国と連合国との戦争状態は、第二三条(註二)の定めるところにより、この条約が日本国と当該連合国との間に効力を生ずる日(註三)に終了する。
註一 (b)では日本の完全な主権を承認している。
註二 第七章 最終条項の批准規定。
註三 一九五二年(昭和二七年)四月二八日に発効した。
第三条 日本国は北緯二九度以南の南西諸島(琉球諸島及び大東諸島を含む 註一)、孀婦岩の南の南方諸島(小笠原群島、西之島及び火山列島を含む 註二)、並びに沖の鳥島及び南鳥島を、合衆国を唯一の施政権者とする信託統治制度(註三)の下におくこととする国際連合に対する合衆国のいかなる提案にも同意する。このような提案が行われ且つ可決されるまで(註四)、合衆国は、領水(註五)を含むこれらの諸島の領域及び住民に対して、行政、立法及び司法上の権力の全部及び一部を行使する権利を有するものとする。
註一 現在の沖縄県・一九七二年(昭和四七年)五月返還。
註二 現在の東京都小笠原村・一九六八年(昭和四三年)六月返還。
註三 国際連盟時代の委任統治地域と第二次大戦の日・伊から分離された地域との行政を国連が一定の国に信託する制度。
註四 アメリカは結局このような提案をしなかった。
註五 領海・当時は三カイリであった。
第六条(a 註一)連合国のすべての占領軍は、この条約の効力発生の後なるべくすみやかに、且つ、いかなる場合にもその後九〇日以内に、日本国から撤退しなければならない。(註二)
註一 第三章 安全(b)は日本軍兵士の復員、(c)は占領軍使用の日本財産の返還を定める。
註二 省略部分で、『日米安保条約』による米軍駐留を認めている。(後述)