13、漁業仕込金融

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 仕込金融については、仕込融通・青田売買融通・収獲物抵当融通・普通貸借などがあるが、漁業については仕込融通が一般に広く行われていた。
 明治43年の漁業法の改正以降、特殊銀行の漁業生産への途はひらかれ、簡保生命保険積立金などから融資も行われるようになっては来たが、大正年間は依然として仕込制度を主とした個人金融が圧倒的に多く、大正13年から15年では全漁業金融の67パーセント余りが仕込融通である。当時、尻岸内村の漁業生産でも大きなウェートを占めていたイカ漁とイワシ漁における仕込関係について述べる。
 
イカ漁  イカ漁を自己資金だけで経営する漁業者の割合は2、3割程度で、多くは海産商、仲買人の仕込みにより行われていた。仕込方法にも種々あったが、現金仕込は月1分5厘から3分くらいの金利で普通は無担保であったが、信用の薄い者には担保物件を提出されることもあった。返済の条件として製品(スルメ)を引き渡し、仕込主が時価清算し、仕込金額や金利を差引くという方法であった。不足の場合は金利を付し次年度に繰越すのが通常の方法であった。
 
イワシ漁  イワシ漁の融資方法は、(海産商が特定の加工業者の代表という形で漁業者に融資する−漁業者の漁獲した生イワシをその加工業者へ引渡させる−加工後は海産商が引取り買手に売却する)、このような流れの中で、海産商はまず加工業者から、漁業者への「代貸付金手数料として搾粕製品仕切価格の2分5厘程度を取り」、海産商は、さらに多くの場合、製品を実際の出来値以下に仕切り、「出来上がり値と仕切値との差額」を得たといわれている。 『北海道金融史(大津久雄)』より