地位及び硫黄鉱

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 函館の東へ約40キロメートル、尻岸内村支村古武井より北、古武井川上流約8キロメートル、急坂を登ること500~600メートル、海抜約300メートルの台地にでる。このあたりを『旧硫黄山』という。ここには坑道が2坑ありその奥へ10メートルほど進むと、白色凝灰岩の上層に厚さ30~80センチメートルの硫黄層が堆積している。また、ここより東方、渓流を遡ったところに40~50メートルにわたり厚さ30~50センチメートルくらいの露頭が発見された。硫黄層は傾斜し地下に潜りその堆積量は計り知れない。この、硫黄鉱石の品質は大変良質で、地下硫水の沈積により生成したものか。また、近くの噴火口(丸山)から流出した溶硫(溶けた硫黄)の結晶したものなのかもしれない。
 一方、旧山の下流約1キロメートル東側の支流を遡ること約300メートル、海抜215メートル程の所にも硫黄鉱が発見され、このあたりを『新山』と呼んでいる。硫黄鉱は厚さ120センチメートル余り白色凝灰岩上に殆ど水平に層をなし、上部は火山石屑で覆われているが露頭が50メートル程もみられ、推測するにその幅は計り知れない。
 明治23年11月巡視当時の状況では、旧山では表土を取り除き(露天掘り)採掘している。新山では2か所の坑道を調査したところ、鉱石の質、層の厚さに差があり埋蔵量を推量しがたいが、2山合わせて概略、原鉱2万石、精製硫黄一万二千石(1,800トン)を生産している。
 なお、旧山・新山の鉱石の分析表を次に示す。
 
 鉱石    水(含有水分)    火(岩石)     硫 黄
 旧山原鉱     1.90%      21.20%     76.90%
 新山原鉱     1.00%      17.60%     81.94%
 
 旧・新両山の硫黄鉱石の多くは他の硫黄鉱石(昇華硫黄)と異なり、灰色を帯び緻密である。また、前表に示すように硫黄の含量もすこぶる多く、且つ鉱層も厚く相当の生産量が期待される。したがって両山の精細な測量・試掘を行う事が肝要である。