北海道で最初に郵便役所が置かれたのは函館であり、わが国の「新式郵便」が開業した明治4年(1871)の8月には早くも郵便役所が開かれた、という記録がある(中村正勝氏による)。当時函館は、長崎・横浜・神戸・新潟とともに港を開く国際貿易港として、各国の領事館や貿易商社なども続々と入ってきており、戸数6千500・人口2万4千余を数える東京以北最大の都市であった。箱館戦争後、政府・開拓使は本道開発に本腰を入れ、翌5年4月には函館を起点に札幌までの国道開削という一大工事に着手、開拓使支庁や官庁や工事関係などからも、近代的な通信網の確立は急務であったと推察される。
明治5年10月1日には道南地方の拠点である、大野(道南の農村の中心、江差への道路の要衝)、森(札幌本道の道南の終点、森桟橋から海路室蘭、交通の要衝)、山越内(旧山越内関所、噴火湾沿岸の重要な駅逓)、室蘭(札幌本道、札幌への起点・重要港湾)にそれぞれ、郵便取扱所が開設され、通常郵便物が取り扱われるようになった。
この郵便取扱所はほとんどが駅逓所に併置され、郵便取扱者の自宅で仕分け等することも許されていたという。郵便取扱所の呼称が、明治7年郵便役所と、同8年には郵便局と改められたことについては、前節の郵便の沿革の中にも記したが、名称は変わっても、組織や事業内容が特別変わったわけでもなく、大方は勿論、役所でもこれらの名称を混用して用いていたようである。