このように火防宣伝を行う一方、消防組は組頭が中心となり設備の充実、消防手の技術向上を計りつつ、昭和三年八月に至り当時最新の米国フォード製のカソリンポンプを購入した。このガソリンポンプの試験結果はすこぶる良好であり、椴法華消防組の見学希望者が次から次へとあり、道南地方各村消防組の羨望の的であったといわれている。このころの様子を「函館毎日新聞」は次のように記している。
昭和三年九月十五日 函館毎日新聞
椴法華
△ガソリンポンプ購入当村消防組には目下手動ポンプ三台を有してゐるが、時代の進歩と年々人家の稠密となるに現在の施設を遺憾とし現組頭松本六太郎氏発起となり、有志の寄附を募り全額を村へ寄附して村費として今回札幌市有益商会より十四馬力一台購入し去る八月二十六日秋季消防演習の節試験を行ったが、成績は非常に良好であった。
このような消防組を中心とする村民一体の努力により、消防設備の充実増強、消防手の技術向上、村民への啓蒙宣伝がゆきとどき、以後火災は少なくなり、かりに火災が発生しても大火災とならぬうちに消火されるようになったのである。
昭和七年と昭和十一年における椴法華消防組の概要は次のようなものであった。
昭和八年村勢要覧(統計は七年末を使用)
椴法華消防組
○組頭一、○小頭五、○消防手六十人、○ガソリンポンプ一、○腕用ポンプ三、○経費総額七百二十円、○一戸負担一円五十一銭
昭和十一年椴法華消防組の概要
○組頭一、○ガソリンポンプ一、○小頭五、○腕用ポンプ一、○消防手六〇、○春季演習一、○秋季演習一、○出火出場一
(昭和十二年度村勢要覧)