大正十四年十月三十一日 函館毎日新聞
惠山沖に漂ふ
烏賊船
第三魁丸(さきがけまる)に救はる
帝國サルヴェージ會社取扱船第三魁丸(二四五噸)は去る二十八日午後七時十勝國小越岬を出帆し函館に歸航の途中翌二十九日午前六時二十分頃渡島國惠山岬を去る東方約二十五哩(マイル)の處に差蒐(さしかか)りし折に洋上に磯船が一隻漂流し居るを發見し直ち近付きたる處救助を求めしため磯舟とも同船に引上げたが漂流者は茅部郡尾札部村字古部村、前野某(三二)とて前日烏賊釣りに出かけその儘(まま)流されてゐたものであると船長は同人を古部村に送り届け今朝當港に入港した。