寛政の「ひろめかり」

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ひろめかり 未来社刊「菅江真澄全集二」より転載

 寛政年間、当時の松前箱館辺りの昆布採りのありさまを刻明に書きのこしたものとして、菅江真澄の著作がある。
 真澄は旅人として松前に渡り、藩の知遇をえて諸々を旅している。
 寛政元年(一七八九)秋、松前城下を出て東海岸沿いに箱館にいたり、恵山岬まで来て一一月一八日、松前にひきかえすまでの日記を「ひろめかり」上下二巻にまとめた。現存しているのは戸井村からの帰途の分であり、上巻は未発見となっている。
 昆布刈りの図絵一七丁三四図の付図のうち、直接昆布に関連する図絵のみを未来社刊の菅江真澄全集第二巻より転載して、もっとも古い、詳細な、紹介書として古き時代の昆布採りの理解に資する。
 このひろめかりの図絵によれば、当時は昆布は鎌刈りするものが多く、舟だけでなく泳いだり、潜水して刈るものもあったようである。
 このあと真澄が記した「えぞのてぶり」に詳しい木直沿岸の海上の昆布採りの様子や、鹿部村での昆布解禁まで凪待ちする漁師の動静などをよく伝えている。