青田売

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 漁家のなかには、生産する海産物を、生活費や漁業資金として前売りすることがあった。なかには前金ではなく、昆布採取の全額を前売りするいわゆる「青田売」の例はたまたまあった。
 個人が地元の仲買人や函館の海産商に直接に青田売りする例が多いが、村方全員で夏の昆布を納める約束で借りることもあった。
 明治一八年三月、木直村方から函館末広町、亀井惣十郎にあてた借用の証(佐藤忠一所蔵)がある。金五百円の借入に対し、利息は壱か月弐分五厘となっている。
 また、川汲昆布採獲人一同が、明治三一年三百円、三二年六百円を、徳田和兵衛から借用した証文(徳田栄治所蔵)がある。利息壱か月百円に付二円と記されている。月二分である。
 木直の場合は、汽船玉浦丸にて元揃昆布百石を納めることを記し、村用取扱人外伍長重立が責任者となっている。川汲昆布売却の金を以て返済するとある。昆布は支払金主である海産商に送られて精算される。これから生産する昆布で支払うという青田売の方法であった。