経済更生計画の策定

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 昭和九年、尾札部村経済更生計画の策定についての記録がある。
 
  農林省ニ於テハ農山漁村疲弊ノ實状ニ鑑ミ其不況ヲ匡救シ産業振興ヲ図リ民心ノ安定ヲ策シ農山漁村ノ更生ニ努ムルハ急務大ナリトシテ経済更生計画ニ関シ昭和七年十月六日時ノ農林大臣後藤文夫道府縣ニ對シ其趣旨ニ付訓令ヲ発シタリ。
  尾札部村ハ昭和九年度経済更生指定町村トナリ尾札部村経済更生計画實施委員会ヲ設置。会長一名副会長一名常任委員若干名、委員若干名、幹事若干名任命。昭和九年十二月五日於磨光小学校協議会開会各委員役員出席、支廳員ノ趣旨普及徹底ニ関スル口演、計画要旨ノ説明基本調査方法ノ指示協議等アリ。同月二十五日基本調査事務打合会ヲ開キ全村調査方針、方法ヲ一定シテ委員ハ部署ヲ分チ一斉ニ各戸ニ就キ正確ニ調査ヲ行ウ。
  計画樹立目標
  基本調査ヲナシタル結果ハ別表ノ通ニシテ之ガ収支ノ関係ヲ見ルニ
  収入總額  六四四、六二四円
  支出總額  八〇四、五八一円
  比較(支出超過一五九、九五七円)
ニシテ約十六万圓ノ支出超過額ヲ示セリ。
  一ケ年ニ於ケル一戸當支出額ハ八百五十五円強。其支出関係ヲ検スルニ交際費冠婚葬祭費及雑支出、十六萬八千四百六十二円、食料費衣服費等三十二萬九千九百六円ヲ要シツアリ。現況ニアルヲ以テ生産改善ヲ第一目標トシ、収支ノ均衡ヲ保有セシメ支出超過ノ駆逐ヲ策スルヲ以テ本計画ノ眼目トシ而シテ各種施設ノ合理的経営ニヨリ、就中漁業協同組合ノ振興強化ヲ策スレバ期セズシテ各種漁業ノ振興並ニ金融及物資供給ガ圓滑トナリ産業及経済ノ好轉ヲ招来スベク以テ之等経営配分ヲ合理的ナラシメ、而シテ負債額六十三萬餘圓ニ對シテ、生産及消費節約諸施設等ト相俟チ漸次條件ノ優和ヲ策シ理想郷建設ヲ策セントスルモノナルモ計画樹立目標ノ選定ノ細目ヲ避クル方針ヲ以テシ大要左記項ヲ計画及實行目標トス。
  施設計画事業
 第一漁業経営ノ合理化及増殖施設
  一、増殖施設
   イ、昆布礁築設 ロ、磯掃除ニ依ル有用海藻礁ノ拡張
  二、沿海及沖合漁業ノ奨励
  三、漁業共同施設ノ拡充ニヨル漁業協同組合ノ強化
   イ、共同販賣事業ノ拡張 ロ、水産倉庫ノ増設 ハ、共同購賣並漁業資本貸付事業 ニ、魚菜市場ノ活動強化 ホ、共同運搬 ヘ、冷蔵施設 ト、生産物ノ保存及加工 チ、漁業経営費ノ逓減
  四、小漁港増築
  五、漁業實行組合ノ組織
 第二農業経営ノ改善
  一、地力ノ維持増進
  二、土壌改良
  三、馬鈴薯増産
  四、農業智識ノ普及
 第三、生活改善
 第四、副業振興
  一、養蚕奨励   二、養豚奨励  三、養鶏奨励  四、養兎奨励
 第五、造林
 第六、負債整理
 第七、漁村教育ノ振興             (「木直小学校沿革誌」)
 
 国の施策は、農漁村の経済的な更生のために重点的な推進の方針をかかげたときでもあった。郷土の沿岸諸村にとっては、駒ヶ岳噴火災害復旧事業の年次計画が終わる頃でもあった。漁業協同組合運動もいよいよ本格化する時期でもあったのである。関係者は、この経済更生計画に漁村経済の安定を期待した。
 
    産業團體
   本村唯一ノ産業團體タル漁業協同組合ハ明治三十九年ノ創立ニカカリ現在組合員七百七十五全村ヲ其区域トシ藻類其他十二件ノ専用漁業権ヲ享有シ従来浅海ニ於ケル漁業上ノ管理統制ニ海藻類ノ共同販賣ヲ其経営事業トシ来リタル處駒ヶ岳噴火災害ヲ契機トシテ地先昆布礁ノ造成發動機漁船ノ建造漁業資金ノ貸付共同購買並ニ販賣事業ノ拡張等漁業上各般ノ施設主體トシテ活動シ事實上産業及経済ノ中心機関トシテ存在シ昭和十年責任組織ニ變更シタルヲ以テ爾後物資並ニ資本ノ供給其他漁業共同施設等凡テ漁業及経済ノ中心機関トシテ期待セラルゝノ大ナルモノアリ。
一、基本調査集計表
昭和九年 尾札部村経済更生計画資料


イ、収入


ロ、支出


ハ、資産


ニ、負債