南茅部の雨量計の記録は、三八三ミリを示していた。河川の氾濫に、住宅に近接している裏山からの出水、土石流、裏山崩落など、国道は寸断されて交通は杜絶、磯谷地区は電話も不通になった。
集中豪雨時の雨量計の自記記録
住宅への浸水、河川の欠壊の知らせが役場に入る。消防団が巡回する。
午前一一時四五分ごろから見日の土砂崩れの報が入ると、次々にポン木直・豊崎・大船と急報とともに、犠牲者の悲報が伝えられた。
通信が杜絶していた磯谷地区の被害状況が伝えられたのは、午後七時過ぎであった。死者八名、重傷八名、軽傷三名。住宅被害全壊一六戸、半壊八戸、一部破損八戸、床上浸水六五戸、床下浸水一六八戸、倉庫・乾燥場全・半壊四〇戸。
河川三五か所欠壊、道路一三か所、橋梁一か所流出、ガケ崩れ六二か所。
合わせて土木被害額六億一〇〇万円、治山被害額三億六、六〇〇万円、被害総額一二億九、一〇〇万円とされた。
被害地区の住民は二四日の大被害の恐怖の中で数日を過ごし、降雨があるたびに不安に襲われて避難する人びともいた。町内外からの救援をうけて、翌日救援と復旧作業のため自衛隊の出動奉仕をうけた。
以来、大型の災害復旧・治山治水工事が組み込まれていった。
ビロ泊裏山崩落現場
九月二四日大雨災害の経過
九月二四日
10時 災害対策本部設置。町内各河川危険水位に達し、警戒体制とる。河川、裏山等の危険地域に有
線放送で避難命令発する。
11時45分 見日地区で住宅三戸倒壊、ケガ人一人でる。
12時20分 日陰浜で土砂崩れにより二人下敷きとなり、重傷を負う。豊崎(二艘潤)で土砂崩れにより二戸
倒壊、地崎工業土工夫七人生き埋めとなり、三人死亡二人重傷、二人軽傷を負う。
14時40分 大船で鉄砲水の水路切替え中、土砂崩れにより、流出され一人死亡する。
15時45分 大船地区で土砂崩れにより、四戸倒壊、三人が生き埋めとなり二人死亡、二人重傷を負う。岩
戸地区で道路通行中、土砂崩れにより、土砂とともに海に押し流された者がいるという通報が
あった。
18時50分 双見(美呂泊)で土砂崩れにより一戸倒壊、主婦が生き埋めとなる。
21時 磯谷小学校々長住宅が土砂崩れにより、グラウンドまで押し流され倒壊、二人重傷を負う。救
助、復旧作業のため、自衛隊機動隊の応援出動を要請。
九月二五日
2時 災害救助法適用。
5時30分 救助作業班を編成(自衛隊五〇人、機動隊四〇人、消防団一五五人、町職員)し、美呂泊、岩
戸地区の二人の行方不明者と磯谷小学校々長夫婦の救助活動を開始。
6時40分 岩戸地区の行方不明者を遺体で発見。
10時40分 美呂泊地区の行方不明者を遺体で発見。磯谷小学校々長夫婦の重傷者を病院に収容。災害対
策本部解散し、災害復旧対策本部を設置。
九月二六日
真駒内から自衛隊員三百人応援出動を得て班編成し、各地区の復旧作業を開始。森田建設省
災害査定官一行来町し、町内の河川、道路を一次査定。
九月二七日、二八日 17時 各地区の復旧作業。災害復旧対策本部解散。
九月二九日 道治山課一行来町し、町内治山個所を災害査定
九月三〇日 道議会議員災害特別委員一行来町し、災害地視察、調査。
一〇月三日 町議会を招集し、災害関係予算、条例を議決。衆議院災害対策特別委員一行来町し、災害地
視察、調査。
一〇月六日 江崎自治大臣、北海道開発庁長官、(建設大臣代理を兼ね)災害地現地調査のため来町し、豊
崎現場で、町長より災害のあらましについて説明がなされ、長官に対し早期復旧について強
く要望。
被害状況報告
広報「みなみかやべ」災害特集号
(表)昭和四八年九月二四日 大雨災害出動人員調
(災害対策本部設置 四八・九・二四 午後一〇時 解散 四八・九・二九 午後一〇時)
九月二四日の大雨災害による復旧、予防事項について、陳情をした。
一、災害復旧の促進について
二、予防治山の強化について
三、台地上の排水溝の整備について
四、局地激甚災害指定について
一〇月二五日、道水産部長一行来町、水産関係災害について陳情をした。
一、土砂流出により天然漁場が壊滅状況にあり、この調査と、復旧対策について
二、各河川の周辺の海産干場の復旧対策について
三、被害を受けた、いそ舟の建造、定置網の購入、増養殖用機械の購入、乾燥室の建築、倉庫の建築のための制度資金の融資について
「昭和四八年九月、道南及び東北北部豪雨災害の調査と防災研究」(昭和四九年一月・研究代表者北海道大学工学部山岡勲)の研究報告に次のように記している。
南茅部町豊崎の崩壊地は図-6に示すように、中島をはさんで左右2か所の崩壊地からなり、向かって右側(L1)は、二四日一四時ごろ、左側(L2)は二五日七時に崩落している。斜面表層の火山灰や樹形、年輪からみて、災害前にも表層の下降運動が起こっていたものと判断された。なお、このような傾向は美呂泊や白岩の崩壊地にも観察された。
(表)表-3 山崩れの形態別ヶ所数
図-6 南茅部町豊崎の崩壊地(傾斜40~42゜)
L1 9月24日14時崩落
L2 9月25日7時崩落