森山泰太郎
「新編弘前市史」は、約四十年前の「弘前市史」刊行以後の調査研究の進歩と、時世の進展に応じる取り組みに編集の主眼を据え、弘前を核としながらその周辺にも視野を広げ、執筆陣の構成にも幅をもたせて発足した。
そのため「資料編」五巻の編集発行に思わぬ年月を費やしてしまった。しかし、その成果については読者の皆さんにはお認めいただけたと自負しているが、一般市民の方々からは、早く通史編を読みたいというご要望が強かったことも、編集委員会一同は共感をもって強く受け止めてきたことである。
このたび待望久しかった「通史編」第一巻を刊行する運びとなったが、これまでお委せくださった市当局のご寛容と、市民各位の温かいお励ましに深く感謝し、今後は可能な限り編集作業を加速して続刊に努め、全体計画の遅れを挽回することが、編集委員会一同の固い申し合わせであることをご理解いただきたいのである。
さて、第一巻の「自然・考古」編は、さきの「弘前市史・藩政編」にはその項目を立てず、この「新編」で初めて実現した内容であることを特記したい。構成は目次に列記したとおりで、広範な地域にわたる視点から、津軽の、そしてわが弘前地方の自然環境全般の科学的知識を導いている。一例をあげると岩木火山や津軽地方の地震など、市民生活の身近な関心事にまとまった記述がなされている。
次に「原始時代」では、いま最も注目される近年の考古学界の新研究で、弘前周辺の遺跡、出土品の調査について斬新な問題点を提起し、市民各層、ことに青少年諸君の正しい認識と新しい興味を喚起するなど「新編弘前市史」への期待感を新たにしてくれると信じている。今後の続刊にもご注目いただくようお願いをして、通史編発刊のごあいさつとする次第である。