これまで常に多くの人々の興味の対象となってきたのが、日本人の起源とも深くかかわる、蝦夷はアイヌなのかという疑問である。
これについては、そもそもアイヌの起源は何なのかという難しい問題があった。かなり早くから、アイヌはコーカソイド(白人)ではないかとよくいわれ、また北海道在住の著名な学者や、法医学の権威者らがかつてこの説を支持したため、今でも根強い影響力を保っている。俗にその根拠とされてきたのは、鬚や体毛が濃いこと、二重瞼が多いことなど、その顔貌が現代の和人と大きく異なり、コーカソイド的であるというものであった。一方、旧ソ連の学者らは、アイヌの祖先をオーストラリア先住民=アボリジニであると主張し続けた。これらはいずれもアイヌを、本土人によって北へ駆逐された者の子孫として説明するのにもっともわかりやすい理論でもあったから普及したわけである。これは沖縄人についても同様で、やはりその起源を本土からの逃亡人であるとする説が今なお根強く残っている。
いうまでもないことであるが、アイヌや沖縄人の祖先は縄文時代以来その地に住んでいたのであって、追われたり逃亡したりして住みついたわけではもちろんない。