写真53 田村麻呂の創建と伝えられている清水寺(京都市東山区)
この謡曲のもとになったものは、数種類存在する『清水寺縁起』などにみられるが、それは早く『今昔物語集』や『扶桑略記』『源平盛衰記』などにもみられるものである。
『清水寺縁起』によると、無事東国を平定した田村麻呂が、延暦十七年(七九八)に伽藍(がらん)を造って観音本像を安置し、同二十四年に太政官符を賜って寺地を与えられ、また大同二年(八〇七)には、田村麻呂が西京にあった彼の家の寝殿を壊して寺に施入(せにゅう)したという。田村麻呂の観音信仰の深さが、清水寺を創建させたというのである。