菜種・水油の商況

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菜種及び水油については以下のように報告されている。菜種は、南、中津軽郡の固有の品種が、低価格を売りものとして輸出され、水油の輸出も順調であった。
(七月卅一日報)同人
 当市輸出ノ菜種ハ専ラ南、中津軽二郡ノ産ニシテ、其仕向先ノ重ナル地方ハ東京市、大坂市、三重県、四日市ナリ、而シテ本年ニ至リ、今日迄ニ輸出シタルハ、数量四十七石、価格弐百弐拾九円拾弐銭五厘ニシテ、其種類ノ多クハ方言草菜種ト称スル下等品ナリ(往古ヨリ管内津軽地方ニテ裁植シタルモノ)、尤此種ハ札幌菜種、近江菜種ニ比スレハ、油液僅少、品質遙ニ劣等ナレトモ、仕向先商人ハ其価格ノ低廉ナルヲ希望セシカ故ニ、本年一月ヨリ四月頃マテ、活溌ナル取引アリ、其後五月以降六月ノ間ハ、道路非常ニ粗悪ニシテ、車馬ノ往来困難ナルカ為メ、随テ其賃銭ニ影響ヲ来タシ、利潤少キヲ以テ、暫ク取引猶予ノ景況ナリ
 水油(当市産)ハ、従来管内外各地ヘノ輸出不尠、而シテ其重ナル仕向地方、東京、大坂ハ相応ノ取引アリ、即本年一月ヨリ三月迄輸出シタル数量金額ヲ挙クレハ、東京市数量四十八石、価格千三百二拾円、大坂市数量十二石、価格三百卅円ニシテ、四月以降六月ノ間ハ、緩漫沈静ノ景況ナリ、其他秋田鉱山ヘ向ケ輸出ノ数量ハ、八石九斗、代価弐百四拾四円七拾五銭、又青森商人ト取引シタル数量ハ、六石七斗、代価百八拾四円弐拾五銭ナリ、種粕ハ(当市産)、本年一月ヨリ四月ノ間、東京商人ト取引輸出シタル数量ハ、七百五十三個(一個ニ付三玉入)ニシテ、其価格ハ九百七拾八円九拾銭ナリ、五月以降六月ノ間ハ商勢沈静セリ
(同前)

 弘前市から移出される菜種は、東京市、大阪市、四日市へ向けられ、交通事情に規定されており、このため一月から四月にかけて多く取り引きされていた。また、水油については、東京、大阪、秋田等へ移出され、また、種粕の移出も行われた。