漆器の商況

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漆器については七月三十一日の報告に以下のように記されている。明治二十年代においては、漆器の県外輸出は十分とはいえなかった。
 漆器(殼塗)(当市産)ハ、管内外各地方ヘ輸出アレトモ、販路未タ十分ナラズ、而シテ管外ニ於ケル重ナル取引地方ハ、北海道庁、仙台、東京市ニシテ、本年一月ヨリ四月頃マテハ活溌ナル取引ヲナセシカ、五月以降六月ノ間ハ商勢緩漫トナレリ、其輸出高ハ、北海道各地方ヘ、数量五百個、価格六百五拾円、仙台市ヘ、数量百五十個、価格弐百三拾円、東京市ヘ、数量三百廿個、価格五百拾円ナリ(但壱個トアルハ小包ナリ)


写真87 津軽塗の製品

 本市製造家ニテ需用セシ漆汁ノ産地ハ、重ニ中、南、西、北津軽ノ四郡及ヒ南部、秋田ノ各地方ヨリ輸入スレトモ、津軽産ハ南部、秋田ノ産ヨリ品質優等ナルヲ以テ、多クハ該品ヲ需用セリ
(同前)

 漆器の移出先は、北海道、東京、仙台であること、漆汁は県外からも移入しているが、津軽産のものが品質が優れているため、多く使用されていることが報告されている。