大戦景気によりわが国経済界は増資ブームが起こるが、地方では中央に比べ、少し遅れてブームが到来し、本県では
大正九年(一九二〇)になって集中的に現れた。その中でも、資本金を二八五万円から一挙に一〇〇〇万円という大増資を敢行した
第五十九銀行は注目された。増資の理由は、
大正九年二月十日の臨時株主総会に提出した議案で次のように説明している。
大戦景気を契機とする産業経済の発達により、資金の需要が増加し、それにこたえるための資金が不足していること。また、現在預金高は一二〇〇万円であるが、もしこのうち一割あるいは二割が取り付けに遭えば、現在の資本金では支払いに応ずることが困難であること。そして、本県物産の最大の販売先である北海道への販売が年々増加し、今では年額二〇〇〇万円にまで達しており、このような資金の動きに対応するには増資が必要であること。以上の理由から増資案は総会で可決され、二月二十四日に大蔵省の認可を受け、四月十二日には第一回の払込みを完了し、公称資本金一〇〇〇万円、払込済み四六三万七五〇〇円となり、表57のように東北地方では第一位の規模を誇る
銀行に成長した(前掲『青森
銀行史』)。
表57 資本金規模による東北六県上位11行 |
(大正9年末) |
行 名 | 県 | 公称資本金 | 払込資本金 |
順位 | 金 額 | 順位 | 金 額 |
| | | 円 | | 円 |
第五十九 | 青森 | 1 | 10,000,000 | 1 | 4,637,500 |
東北実業 | 宮城 | 2 | 7,500,000 | 2 | 4,185,000 |
盛 岡 | 岩手 | 3 | 7,000,000 | 4 | 2,912,500 |
第百七 | 福島 | 4 | 5,000,000 | 5 | 2,750,000 |
七十七 | 宮城 | 4 | 5,000,000 | 6 | 2,375,000 |
秋 田 | 秋田 | 4 | 5,000,000 | 7 | 2,000,000 |
両 羽 | 山形 | 4 | 5,000,000 | 3 | 3,050,000 |
第四十八 | 秋田 | 5 | 3,000,000 | 8 | 1,500,000 |
岩 手 | 岩手 | 5 | 3,000,000 | 8 | 1,500,000 |
第九十 | 岩手 | 6 | 2,500,000 | 9 | 1,075,000 |
宮城商業 | 宮城 | 7 | 2,000,000 | 7 | 2,000,000 |