「民俗芸能」の語は近代の呼称であり、第二次大戦後に一般化した。広義には演劇・舞踊・音楽を伴う民間習俗である。落語、漫才等を大衆芸能と呼ぶため、神事にかかわるものを「芸能」の名で統括されることに違和感を覚える者もいる。文化庁では無形民俗文化財とする。年中行事、民間宗教としての百万遍(ひゃくまんべん)、イタコ、虫送り、ねぷた等の習俗であるが、いずれも音楽が構成要素として重要である。
明治政府は旧暦の明治五年(一八七二)十二月三日を新暦の六年一月一日に改めた。旧弊(きゅうへい)を断って近代化を図るため、旧暦と密接に関連した年中行事や信仰、風俗を禁じた。公には禁止されたものの、ひそかに旧(ふる)い習慣は庶民の間で続けられていた。