津軽地方の民俗芸能の代表は獅子踊(獅子舞)である。獅子踊には幾つかの形態がある。一つの獅子頭(ししがしら)の幕(胴となる布)に二人で入る「二人立ち」の形態と、一人が入る「一人立ち」の形態である。津軽の獅子踊は後者であり、腹に太鼓をつけ桴(ばち)で打ちながら、三頭(三匹)で踊る「一人立ち三匹獅子」である。猿、ヒョットコなどの面をかぶる「オカシコ」は道化役となり、獅子を誘導したり、獅子もどきになってともに踊る。弘前市で県の指定を受けている組は以下の四組である。種市(昭和三十六年一月)、一野渡(昭和三十六年一月)、大沢(昭和三十七年一月)、悪戸(昭和三十七年一月)。
音楽は、笛、太鼓、鉦、音頭からなる。踊る状況、場所によって謡われる歌詞があり、その旋律の上にオブリガートとして笛の旋律が奏されるのが基本である。
津軽の獅子踊の創始として、「弘前市松森町の獅子踊から伝えられた。津軽藩の庇護を受けて伝承されてきた」とする伝承が多い。由緒は巻物として書かれ、詞章を書く形式になっており、伝承の正しさと、権威は巻物によって保たれている場合が多い。
伝承が途絶えていく過程では、まず笛の奏者から支障が生じ、音頭掛け、踊り手などと減じていく。その背景にはコミュニティの崩壊があり、若者の地域からの離脱と、伝統に対する価値意識、演ずる必然性の喪失である。獅子踊が抱えている問題点としては、民俗芸能研究者の大村達郎によると、「県下獅子踊大会、ならびに〈熊獅子〉〈鹿獅子〉の二分法」であるという(大村達郎「青森県における獅子踊り研究の現状と課題」『東洋大学大学院紀要』第三九集)。