洋風建築から近代建築へ

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大正期の建築の特徴は、前代の手法を踏襲しつつ、装飾に関しては省略化の道をとったことである。前出の弘前商業会議所は、ポーチをはじめ各部の様式が極度に省略され、直線を主体とするほか、軒や屋根には鉄材による新しい装飾が試みられていた。また、官立弘前高等学校校舎(大正九年〔一九二〇〕)は、文部省の設計であるが、装飾の簡素化からさらに一歩進めて、正面外観の相称性まで破るほど斬新なものであった。
 同様の傾向は、その後の弘前市公会堂、「角は」デパートの設計に引き継がれ、大正十年代からが弘前地方における近代建築の始まりの時期であるとすることもでき、その反対に洋風建築が下降していく時期となるのである。