解題・説明
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欄間は天井板と鴨居の間にある空間。明かりや換気用スペース。平安期に原型が出現していた。品格を表すとして高級木造住宅には欠くことのできない装飾品とされ、凝った欄間が作られた。坂野家住宅には菊の紋がある透かし彫りの欄間が一の間と二の間の間にある。現在は坂野家家紋の蔦が施されているが、元は菊の紋であった。菊の紋様は後鳥羽上皇が菊を好み、自らの印として愛用した。その後の歴代天皇が印として継承し、慣例のうちに十六八重表菊が皇室の紋として定着した。江戸時代には葵紋とは対照的に一般庶民にも浸透し、和菓子や仏具などさまざまなデザインに使用された。坂野家住宅の菊紋も「デザイン」として採用されたと考えられる。坂野家の欄間の変遷は武士の時代から帝国の時代への移り変わりを明示している。
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